オートマチック
「あの、ユウキさん」
「ん? なに?」
「もしかして、剣の扱いに慣れてるとか?」
「いやっ……そんなことはないよ」
正直に言うとなくはない。ユウキは高校の時に剣道を選択していた。クラスメイト相手には(剣道部員を除く)敵なしで、面白がった剣道部員に半ば無理やり昇段試験を受けさせられていた。二段までストレート合格だった。剣道部にしつこく誘われたが、それは頑なに断った。1対1の競技と実戦は違う。生兵法は命取りだというのを理解していた。下手なことは言わない方がいい。
「初めて見る剣の使い方を分かってるのがすごいなぁって」
「本で見て知ってただけなんだけどね。こっちの世界にもあったのが意外だったけど」
「マルボークに行けば、東の国の変わった武器を扱う武器屋があるかもしれないっすね。片刃だけど細身でめっちゃきれいな剣もありましたよ。それは貰えるやつから外されてたんすけど。高いんだろうなぁ」
「……!」
(日本刀のことだろうか……。異世界だから微妙に違ったりするかもしれないけど)
ユウキは動揺を気取られないよう話題を変えた。
「マルボークかぁ・・・大きな町なんだよね」
「大きいなんてもんじゃないですよ。町の外側全部がレンガの壁です」
「地図でもそんな風に描かれてるよね」
「こことマルボークの間にあるザグレーブも城塞で囲まれてますね」
「・・・あのさ、鉄砲鍛冶ってマルボークまで行かないと無い感じ?」
「・・・恐らく」
「じゃあ新型銃の開発はマルボークに行けるまでお預けかぁ……。そんな自由になれるだろうか」
「え? なんなんですかその話」
「いやぁ、そんな焦らなくても大丈夫ですよ」
「あっ、それでちょっと確かめたい事があってね」
「わたしをほったらかしにしないで下さいー!!」
3人はニワトリ亭を出て、町の境界線を示す木柵のところまで来た。ユウキはエイムの銃を借りてアンが持っていたロープで木柵に括りつけた。そしてグリップの真上に当たる部分に弾丸をひとつ置く。
「この状態で、上に乗っかってる弾にだけ着火できる?」
「出来ないですよ」
あっさり言う。
「じゃあ、中に入ってる弾だけには? 上のには着火しないで」
「出来ます」
エイムは銃口の先に誰もいないことを確認してから銃を発射した。バァァァン!と銃声が鳴ると衝撃で銃に乗っていた弾丸が地面に落ちた。円柱状の弾丸には底に火薬が入っていて、紙で封がしてある。拾った弾丸の封は外れていなかった。
「銃には発火魔法を略式で発動するために印を付けていて、そこでしか発動しないんです。そしてこれは私が付けたものなのでこの銃は私にしか使えないんですよ」
「理想的だ。それならオートマチックは出来るな」
tips:マルボークはドイツ騎士団が建設した城塞都市マルボルクがモデルです。
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