異世界の銃の仕組み
「は? 今なんと?」
「あーいや、そうだ! 君の銃が見たくて! 見せてもらっていい?」
エイムは思う
(どうしよう……、いきなり失礼なこと言われた気がするけど)
それでも、半ば呆れながら
「はい、いいですよ」
と、ホルスターから銃を取り出し、念のため弾を銃身から転がして取り出しグリップをユウキに向けた。
その様子を見て
「えええええええ───っ」
ユウキは頼んでもない変顔を披露して驚く。
「どうかしました?」
「いやっ……、ありがとう」
ユウキはまず弾丸が飛び出してくる部分───、銃身の内側を観察した。ライフリング(溝)は無い。さっき銃身から弾を取り出したし、他に弾丸を装填する仕組みは見当たらない。基本的な構造はマスケット銃に思えた。マスケット銃は分かりやすく言うと火縄銃だ。
ユウキが魔物から助けられた日は雨が降っていた。あんな日に火縄銃は使えない。銃身の底に仕込んだ火薬を、火でくすぶらせた縄で直接点火して発砲する仕組みだからだ。
ということは、異世界ならではの方法で弾を発射している。だから引き金が無いんだ。とユウキは考えた。
「これってさ、魔法で撃ってるの?」
「へぇ───さすが転移者ですね。ご名答!」
「具体的には?この中で炸裂魔法でドカンとか?」
「や───だ───」
エイムはちょっと意地悪な笑みを浮かべて
「そんなことしたら暴発するじゃないですか」
「むっ……、それもそうか」
さっき取り出した弾を親指と人差し指で挟んで見せて
「ここに火薬を仕込んでるんです。ここに点火するだけ」
「なるほど! ホントに魔法火縄銃なんだ」
「ほんの小さな火でいいんです。だから詠唱も術式も省略できて」
「うん」
「ちょっとした合図で発動できるように準備しておくんです。私の場合は、フッ!って感じで」
軽く息を吹く。
「まあ、ちょっと訓練は必要ですけど。ちょっと弾を込めてみてください」
エイムは弾を手渡した。
「さっき転がして取り出してたよね……あれっ……これキチキチじゃん」
「で、私が魔法で装填すると……」
シュッと一瞬で弾が銃身の奥に収まった。
「すごいね! びっくりした!」
「あはははははっ! あの時の驚いた顔はこんなものじゃなかったですよ!」
エイムは驚いた顔をオーバーに表現して見せる。
「まいったなぁ・・・そうそう、あのね」
ユウキはちょっと改まって話題を変える。
「俺が元にいた世界の銃の歴史は500年以上あったんだ」
「でもって、この銃はごくごく初期の技術のものなんだよね」
「うん」
エイムは期待している目で先をうながす。
「この世界の鍛冶の技術でどこまで出来るかは分かんないけど」
「すごい銃が作れちゃう?」
「アイデアがいっぱい浮かんできた」
エイムは不意に立ち上がって、おどけたポーズを取って見せた。
「わたし、無双できちゃいます?」
「できるさ!」