9姫に招待状を
姫の話を聞いて気づいたが同世代の友達の話が少ない。城にいる者や他の国の姫との文通の話にはよく出るが、身近な友達の話はあまり出てこない。聞いてみると町の子供たちとは話すが、遊ぶことは少ないという。
確かに姫ともなると怪我をしたら危ない。勉強も学校ではなくて城にいる教育係でやってるようだ。
むむ、僕の考えが至らなかった。姫が友達を作る機会がない流れを作ってしまった。どうにかせねば。
そこで僕は魔法学園について思い出した。あそこは魔法の国にあるが、あそこに通えないだろうか。
「何か考えごとですか?」
「ん? いや、何でもないよ。ただ、そうだな……姫様、学校に通ってみたいと思いませんか?」
「学校ですか? それはもちろん……ですが、私の立場から、この国にある学校に入学するのは難しくて……」
「それなんですが、これをどうぞ」
僕はズボンのポケットから手紙を出した。
「これは?」
「じつは魔法の国にある魔法学園が入学の募集をしているんです。新しいクラスで、魔法の国の外からの入学者を募っているのです」
「まあ! 本当ですか!?」
姫は目を輝かせていた。
「これは僕の宛てに来たものです。誰か候補がいれば呼んできてほしいと。そこで、僕は姫様を推薦したく思い、この招待状をお送りいたします」
僕は招待状を姫に渡す。姫は慎重に手に取った。
「勇者様……本当にいいのですか?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます! 大好きです!」
姫は僕に抱きつく。喜んでもらえて何よりだ。
招待状は僕が今作り出した。学園都市の方でも『以前に僕に候補者への招待状を送った』という過去になったはずだ。
姫、今度会う時は、学校での友達の話を聞かせてください。