7夢の世界の常識
手紙の送り主は花の国の姫だった。花の国は姫をまず思い浮かべてイメージを広げた国だ。
「なになに……。また新しい花を持ってきてほしい、か」
「クエストだね。そろそろ姫に会いたくなったの、ご主人様?」
空子が言ってる意味は「夢の世界は僕が作ってたんだから、起こる出来事も僕の意識や欲望によって起きてるはずだから、姫に会いたくなったので、クエストが発生した」ということだ。
「それは違うよ。これは僕の無意識が作り出した、夢の世界で起きる自然な流れなんだ」
これは夢の世界で過ごすようになってから、大分後になって分かった。僕の自意識とは別に、無意識も夢の世界に反映している。
「この村に来たら、村長の孫の話を聞かされるだろう」とか「この街の裏路地に来たら危ないことが起きないとおかしい」とか、夢の世界もしくは現実でも常識と言える流れがある。それを無意識で作り出している。無意識下で整合性を生み出してるんだ。
この世界の出来事が全て僕の予定調和というわけではない。
姫から新しい花を求められるのは、これで3回目。僕の無意識が、そろそろ姫が花を欲しがるところだと判断したのだ。
「なるほどねー。まあ、ボクには関係ないことだし、寝てるかなー」
空子はリビングで寝っ転がった。
「じゃあ僕は、花でも作りますか」
僕はイメージを浮かべる。いずれ姫からクエストが来ると思って、花の図鑑で勉強していた。僕は色とりどりの花々を手の中で作り出した。それを花束にする。
「じゃあ行ってくるか。空子、一緒に……って寝ちゃったか」
空子は身体を丸めて猫のように寝ていた。
僕の作り出したモノだ。だから願えば起きて、嬉々としてついてきてくれるだろう。
でも、僕はそうせず、静かに空を飛んで、花の国へと向かった。