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夢の世界で淡々と生きる  作者: 送間
3章 妖精と吸血鬼のブーケ
63/100

63世界崩壊を防ぐには

「ただいま」


「ただいまー」


僕と空子は丘の家に帰ってきた。


まだ夜明け前だった。あと数時間経てば、日も出るだろう。


「ご主人様、身体の調子はどう? 悪くない?」


空子は僕を見て、心配をしてくれる。


今、僕には左腕に『血の薔薇』が刺さっている。血の薔薇は僕の血を吸って、生気を宿していた。


血色城の吸血鬼に、血の薔薇を刺されてから、それなりに時間が経ったが、僕の体調に変化はなかった。


「そっかー。なら良かったー。じゃあボクはシャワー浴びてくるねー」


空子は安心したようで、そのまま家の奥へと行った。


僕は腕の血の薔薇を見た。腕と薔薇が刺さっている箇所を軽く触れると、指に血がついた。


夢のなかで血を流したのは初めてだ。なんせ僕は怪我なんて無用な力を持っているのだから。


僕は自分の胸に触れる。鼓動がした。この鼓動は本物なのだろうか。それらしく動いているだけな気がする。


夢と現実で、鼓動は連動しているのだろか。


現実の僕は自室のベッドで寝ている。その間も呼吸しているし心臓が動いている。そのことは、夢の僕の呼吸や心臓と関係があるのだろか。それは分からない。


ただ夢世界で死んだら、僕は目が覚めることは分かっている。


一度だけ明晰夢のなかで死んだことがある。


普通の夢なら何百回と死んだことある。根がネガティブなので、幾度いくどと事故死や殺人をされてきた。でも明晰夢のなかなら無敵なので、死ぬことはなかった。


試しに一度だけ死んでみた。


そのときのことは鮮明に覚えている。夢のなかでも死ぬのは怖かった。


試行錯誤した結果、僕は落下死を体験して、目を覚ました。


だから、もしかしたら血の薔薇に血を抜かれ続けたら、死んで目を覚ますのかもしれない。けれど、これに関して言えば、僕が『血液不足による死亡』を想像できないため、夢のなかで死亡を再現できず、死ねないように思える。


『高い所から頭から落ちたら死ぬだろう』という想像はできるけれど『血液不足による死亡』は想像がしにくい。僕の知識不足、経験不足によって夢で再現できない。だから、そういった原因では死ねないのではないか、と思う。


なにより明晰夢の力である程度の事象は無視したり改変できるので、死はほとんど回避できる。


ただ、血色城での血の底なし沼を味わったとき、アレは終わりかと思った。


あの展開の流れで無理矢理、明晰夢の力を使っていたら、死は回避できても、夢は崩壊していたと思う。


力づくで解決していたら、吸血鬼との対話に失敗し、エルアちゃんの依頼も失敗し、ただの徒労で終わっていた。僕はなにも出来ず、立ち尽くしてしまう。失敗した夢の続きを想像したくないし、無意識も修正不可能だろう。


明晰夢の力を使って吸血鬼を心変わりさせることもできるが、どこかにほろこびが生まれ、夢は支離滅裂になる。


夢世界の時間と空間は、僕の行動によって生成されていると言っていい。その僕の行動が止まったら、時間と空間も止まる。夢世界は終わる。そして目を覚ます。


血の底なし沼での一連の展開は、僕の死というより世界が崩壊する危機だった。


せっかく夢のなかで現実逃避しているのに、現実に戻されるのはまっぴらだ。できるだけ長く夢にいたい。


僕が死ぬことはないが、夢世界に長くいるためには、できるだけ矛盾は避けないといけない。


そうでなければ夢での生活や冒険から、現実のベッドに戻されてしまうのだから。

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