6まだ夢の世界にいたい
美女湖でフニャフニャになった僕は空子に運ばれて、丘の家に着いた。
「ま、まずい……取り乱して、意識が……」
「んー? ってことはそろそろお目覚め?」
「い、いやだ! まだいる! よし!」
僕は一階のリビングで座禅をする。そして深呼吸。
夢の世界に出来るだけ長くいるには、僕の意識を安定させること。取り乱すと、そのまま夢の世界から弾き飛ばされるように夢から覚める。
そこで僕は安定させる方法を用意した。まずは座禅と深呼吸。次に行うのは心を無にすること。
「ふうー……」
美女湖の出来事は強烈だったが徐々に落ち着いていく。
頭の中が空白になっていくなか、僕の安心するモノが思い浮かんでくる。
それは空子の顔だった。
「落ち着いた?」
空子が身体を横に傾けて、座禅している僕に呼びかける。
一瞬、心臓がどくんと動いた。
「……うん、おさまった」
まだ空子といたい。
コンコンとドアがノックされた。
「あれ、誰だろう?」
「出てくるよ」
僕は何となく察していた。
ドアを開く。そこには小っちゃな鳥人がいた。
「はい! お手紙!」
鳥人の子供が手渡しで僕に手紙をくれた。
「ありがとう」
この世界には鳥人がいる。腕に羽が生えていて飛行できる。僕ほど高い高度、速度は出せないが、郵便配達員で活躍している。
直接僕に手紙を渡すと、小っちゃな鳥人はバタバタと羽ばたかせて行ってしまった。
「なになに~。どんなこと書いてるの~?」
「なに、いつも通りだよ。嬉しいことか危ないことさ」
僕は封筒を開いて手紙を読んだ。