44結婚のブーケ
アンドロイドは科学の国に生まれている。科学の国の国民はほとんどが人造人間、人工生命体だ。国民は『母』と呼ばれるコンピュータが作った製造工場で生まれる。
アンドロイドというと、人間が製造して、人間の命令に従って行動するイメージがある。でも、この世界のアンドロイドは人間の所有物ではなく、ひとつの種族として生きている。
僕を尾行していたアンドロイド、エルアちゃんも科学の国の出身だ。そして珍しいことに魔法学園の生徒でもある。アンドロイドの魔法使いだ。
「花束を作ってほしい? 僕に?」
「花束というか、その、ブーケなんです」
「ブーケっていうと、結婚式に使われる物を想像するけど、それ?」
「はい。じつは姉が結婚するんです。結婚式のブーケを、感謝の気持ちを込めて用意したくて」
「それはすごくいい案だね! でも、そのブーケを僕が作るという発想はどこから……?」
「きっかけはフローラちゃん、えっと、花の姫と会ったからなんです」
フローラは姫の名前だ。そうか、魔法学園で同級生だったのか。
「そうなんです! 転入してきたフローラちゃんには、よくしてもらっていて……変ですよね、私の方が先にクラスにいたのに、転入生にお世話になるなんて……。私、内向的で、あんまりクラスで馴染めてなかったけど、フローラちゃんが話しかけてくれたおかげで他のクラスメイトとも仲良くなってきたんです」
一国の姫ということもあって社交性があるからだろう。心配せずとも、姫は学園でちゃんとしているらしい。
「フローラちゃんと会話していると、勇者さんの話題がよく出るんです。いつも素敵な花を持ってきてくれるって。今度、花の国が作った空中庭園で、勇者さんが姫に贈った花が見れるって。そんなことを聞いていたら、姉の結婚祝いは花束にしようって思ったんです!」
「なるほど、それでブーケなんだね」
「それで、空中庭園の花を見て、どういうブーケにするか考えていたら、偶然、勇者さんを見つけたんです! これは運命だと思って、声をかけようとしたんですが、その、あの、内向的なもので……」
エルアちゃんは顔を赤くした。
すると、空子が会話に入ってきた。
「なるほどねー、事情は大体わかったけど、それってご主人様が手伝っていいのかな?」
「もちろんです! なにか問題がありますか?」
「エルアちゃんが選ぶことに意味があるんじゃないの? ご主人様なら確かに今日中にでも素敵なブーケを作れるけど、それはただの外注じゃない? お祝いの気持ちが伝わるのかなー」
「う……」
エルアちゃんが言葉を詰まらせる。確かに空子の言う通りかもしれない。あと今日中は無理かも。一度、夢から覚めて資料を読ませてくれ。
「僕は協力するよ。ただ、こういうブーケにしたいってイメージはエルアちゃんに任せる。そのイメージを元に僕が花を用意する。それでどうだろう?」
「い、いいんですか?」
「こんな素敵な理由で頼まれたら、断る方が難しいよ」
「ありがとうございます!」
こうして僕はエルアちゃんの依頼を受けた。




