34設定を超えた者
「どうやら世界は魔法とは別の力が働いているようです」
「別の力?」
「熱や魔とも違う、もっと大きな根本的なエネルギーが発生している可能性があります。私は魔法学から、その新しいエネルギーについて研究へ移して、新しい学問を生み出すつもりです」
「それは、とても重要な話だね」
「まだ仮説の域を越えませんが……」
「もっと話を聞かせてもらっていいか?」
「では……、この世界は様々なエネルギーがありますが、その中でも魔力が大きく影響しています。例えば、自然の魔力を浴びた動物はモンスターになり、魔力を人為的に操作できれば人間は魔法使いになります。獣人や鳥人も自然の魔力を浴びた結果、動物的な特徴を持って産まれます。そして何より魔力は文明を築くうえで重要な動力源になります。国によって比率は異なりますが、魔力なしに生活はできません」
「そうだね」
魔法の国ならエネルギーのほとんどを魔力でまかなっていて、現代の国なんかは魔力をあまり使っていない。
獣の国や鳥の国は自然の魔力を利用して暮らしている。なので魔力の発生源である土地を開拓せず、そのままにしている。
深く考えたわけじゃないが、徐々に整合性のあるものになっているのかもしれない。勉強はあまり得意じゃないので、ここら辺は不安だ。
魔女は続けて、
「なので当たり前のように魔力の解明を最重要として研究をしてきましたが、考えれば考えるほど、なにか、おかしいと思うんです」
「おかしい?」
「私はあらゆる魔法を研究し、覚えました。時間と空間、光と闇、宇宙と夢」
魔女は手元の紙をなぞる。そこに魔法の全てが書かれているのか。
そして、夢、という言葉が出て、僕は緊張する。
「私は魔法に関していえば、ほとんど知り尽くしました。しかし、分からないことがひとつだけあります。あなたです」
「僕……」
「私が築いてきた魔法の法則を無視しています。勇者様を除けば、魔法の法則は成立します。あなたは魔法使いから逸脱しています。なのに、魔法ごとき未知の力を持っている」
魔女は僕の瞳を覗きこむ。
「勇者様、私はふたつの仮説を立てました。ひとつは世界が勇者様という未知の
エネルギーを有した人間を作り出した。もうひとつ、勇者様が世界を作り出した神である」
「……本気で言ってるんだね?」
「私は魔女から修道女になるのかもしれません」
魔女は真相に辿り着こうとしている。魔法の天才として作り出した魔女は、その僕が考えた設定を超えて、ここまで来た。
僕が創造主であることが世界に広まったら、平穏な暮らしができなくなる、どころじゃないかもしれない。
僕は実際に神がいる世界がどう動くかなんて、想像できない。この世界だって小説や現実を参考にしてやっと実存性を保っているのに、神が認知された世界なんて実存性を保てない。
僕の想像力不足で、夢の世界は崩壊するだろう。
横にいる空子は、今までで一番怖い顔をしていた。このままでは良くない。
「魔女、どちらかの仮説が正しかったとして、それを僕に直接話して、なにが望みだい?」
「ただ研究を続けるだけ、対象が魔法から勇者様に代わるというだけです」
魔女は立ち上がり、こう言った。
「勇者様、私はあなたと共に生きたいです」




