32魔女
魔女は美しく、妖艶だ。整った顔で、瞳は光を吸い込みそうなほど黒い。しなやかな肉体は衣服に張りついて、身体の輪郭が丸見えになっている。
「お待ちしておりました。中へどうぞ入ってください」
魔女は薄い唇でかすかに笑みを作る。魔女は空子を見て、
「ところで、そちらの方は……勇者様の愛人ですか?」
「え、いや、空子は」
「ボクは正妻です! ねー、ご主人様?」
空子が僕の腕に絡みついて、大声を出す。
「そうなんですか勇者様?」
「あー、えっと……」
確かに空子は理想のヒロインとして生み出したから、正妻と言えなくもないが、いきなり重い関係になってきたな。
言葉に詰まっていると、絡みついた空子が力を込めて、僕の腕が軋んだ。
「そうだよね! ご主人様!」
「う、うん。空子は、僕のパートナーだよ」
「そうでしたか、勇者様にお相手が……。おめでとうございます。私にもし力になれることがあれば、手伝わせてください」
魔女は空子に頭を下げる。
「そうね、何かあったら、その時はよろしくお願いしますねー」
「はい、どうぞよろしくお願いいたします。勇者様とは昔、一緒に旅をしたり魔法の共同研究をしたりしてました。プライベートでも大変お世話になっております。これからは勇者様だけでなく、空子様とも仲を深めていきたいです」
「ふーん……。ボクもご主人様とは長い付き合いなんだ。一緒にいるようになったのは最近だけどね。まあ、ご主人様という共通の話題があるからね、じっくり、話をしましょうかー」
「はい、ふふふ……」
「あはははー」
(な、なんだ……なぜか緊張のある空気だ)
この空気に耐えれないので、僕は話を切り出した。
「えっと、じゃあ、また部屋に行けばいいのかな?」
「はい、私の部屋に行きましょう。空子様、こちらです」
魔女が前を歩いていく。僕と空子はついていった。
魔女は後ろのふたりを見ながら、
(勇者様に伴侶が……。世界に変化が起きそうですね……)
そう心のなかでつぶやいた。




