18友達づくり
木々に隠れた沼の中にスライムが棲んでいた。ゼリー状の軟らかい生物が沼の水面に浮いていた。
濁った沼と同じ色にスライムは染まっていた。清潔ではなさそうだ。
僕たちは馬から降りてスライムに近づいた。
「えっと、こんにちは!」
僕はスライムに声をかけた。
すると沼から突起物が現れて、僕に近づいてきた。
空子は僕を護るようにして前に出る。ガウは所持しているライフルを構えた。
突起物は僕の顔に近づいて、観察しているような仕草をする。数秒間後、突起物は戻った。
沼のスライムの一部が変形する。角笛のような形になると、音が聴こえてきた。
「はじめまして、勇者」
「あ、ああ! はじめまして!」
スライムが僕に話しかけてくれた! どうやら会話ができるようだ。
「私に何の用でしょうか。退治に来ましたか。私のような汚らしいモンスターを殺せば、さぞ獣の国の方々も喜ぶでしょう」
「おい、アタシたちがアンタを毛嫌いしてるみたいな言い方やめてくれない? 勝手に離れていったのはそっちでしょ?」
ガウは眉をひそめた。
「黒の森にいるころは良かったです……誰にも邪魔されず、雨にあたって気持ちが良かった。しかし縦穴から危険なモンスターが出てきてしまい、今はこうして、ここにいるのです……」
スライムの声は小さくなっていた。想定よりも感情豊かだ。
「黒の森に戻りたい?」
僕はスライムに尋ねた。
「はい……」
「じゃあ戻れるようにするよ」
「え?」
「僕が黒の森にいる、その危険なモンスターを退治してあげる」
それを聞いてガウは驚いた様子になった。空子は微笑んでいた。
スライムは黙った。しばらくして声を出した。
「どうして、そんなことをしてくれるんですか?」
それは、なんでだろう。
いや……簡単だよ。
それ以外にやりたいことなんてない。
僕がやりたいからやる。善意でさえない。僕はこういう展開でスライムと仲間になるチャンスをうかがっていたんだ。自分勝手な話だ。
まあ、それにスライムを困らせるつもりはなかったけど無意識下の整合性でこうなってしまった。黒の森は世界観にリアリティを持たせたくて作っただけなのに、こうも作用するとはね……。
「僕は君と友達になりたいんだ。でも、いきなり友達になろうって言うには、僕の信用が足りないですよね。僕、ただでさえ色々噂が立ってる身だし……。だから黒の森にいるモンスターを倒したら、僕を信用してくれないかな? それで、友達になってほしい、どうかな?」
「……友達とは、そうやって作るものなのですか、勇者?」
「ど、どうだろう……」
(友達いないから分かんない……)
「……分かりました、勇者。黒の森のモンスターを倒してくださるのなら、友達になりましょう」
「ほ、本当!? ありがとう!」
「ですが、ひとつ改める点があります。もし黒の森のモンスターを倒さなくても、私は勇者と友達です。私はすでにあなたを信用しています」
スライムは優しい声でそう言った。




