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夢の世界で淡々と生きる  作者: 送間
1章 明晰夢で作り出した世界
1/100

1夢の世界へ行く

僕の高校生活は単調でつまらなかった。家と学校で往復をしているだけ。ボーッと過ごしているうちに友達づくりに失敗して、学校で居場所がなくなって、ひとりになった。家族も僕を情けない奴だと思ってるような素振りをしていて辛い。


少しずつ積もっていくストレスを、ゲームやSNSで気を紛らわせていたが、それにも限界がきていた。


ある日から、なにもやる気が出なくなった。


ベッドから身体を起こすことすら面倒になった僕は寝た。そこで、とても単純な気づきを得た。


寝ている間は、辛くない。現実の居心地の悪さから遠ざかれる。


そこで僕は最強の現実逃避、睡眠を選んだ。ひたすら寝た。学校でも家でも寝続けた。結果、僕はある能力に目覚めた。


僕はいつでも明晰夢を見れるようなった。明晰夢のなかは、自分の思うがまま、夢の内容を改変できた。


そこでなら、僕はどこまでも自由に過ごせた。


だから今日もまた夢の世界へ行く。


夢を見るためには『儀式』をする。まずベッドで仰向けになって目を閉じる。すると一瞬で眠気が来る。僕は薄れた意識のなかで夢に行くための準備を始める。


大事なのはイメージ。自分が世界の中心だと暗示をかけて、身体がベッドごと回転するイメージをする。


(おお、回転してきた回転してきた)


と自己催眠を掛ける。実際はそんなわけないと分かっているが、自己催眠を掛ける練習を繰り返すと、脳が錯覚して本当に回転しているようになっていく。


次はベッドに沈んでいくイメージをする。ベッドにどんどんめり込んでいくような感覚が頭や腕、身体全体に伝わっていく。


(あ、落ちる)


そう感じる瞬間がおとずれる。催眠が脳を騙し切って、現実と妄想を曖昧あいまいにする。


ベッドから身体が突き抜ける。ベッドの下、奈落の底へ落ちる感覚に襲われた。スカイダイビングで背中から落ちていくようだ。


もう現実ではなく、催眠の感覚に支配されて、まるで本当に起きているように五感がはたらいている。


落下する感覚がずっと続いていく。ここまで来たら、最後の仕上げだ。


どんな世界に行きたいか、あとはそれを想像するだけ。


僕は想像する。この明晰夢を覚えてから、僕は同じ世界を想像している。そこは幻想溢れる異世界であり、現実やSFもてんこ盛りの、何でもありの世界だ。


夢の世界へは、今日で通算67回目の来訪になる。


具体的にイメージをできたら、ずっと仰向けだった体勢から、ぐるりと身体を回して落下している下を見る。


そこには夢の世界が広がっていた。


高度二千メートルから、風を切って落下しながら、視界に広がる光景を見る。


広大な陸地と海。陸地には深い森と多数の国の都市が発展していた。海には航海している船や巨大な魚の姿が見えた。


滑空しながら身体を傾かせて進路を変える。僕が目指すのは丘の上にある自分の家だ。


「さあ、今日も現実逃避……もとい、冒険しよう。自由に」


僕は広げた腕をとじて、身体を真っすぐにする。スピードが上がり、目的地へ一直線に向かっていった。

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