結花さん家お泊まり④
さっきドライヤーで乾かしたけど、やっぱり結花の長い黒髪はまだ濡れている。
結花は仕上げに白のタオルで髪を優しく撫でる。
その仕草がどうしても色っぽく見える。
……あと、結花が今着てる淡い水色のパジャマ、少し薄くないか?
横になったらはだけてしまいそうなんだが。
いつもそんな軽そうな服装じゃないよね?
エアコンは入っていて、結花の服装も涼しそうなのに、俺は暑く感じる。
「夜更かし、久しぶりだね」
「そうだね、正月ぶりかなあ」
ワクワクしているのが見て取れる。
「布団入って、ずっと話そう?」
「おー、いいよ!」
布団に横になる。
結花と俺は向かい合っていて、目の前にお互いの顔がある。
……近っ。心臓が跳ねた気がした。
「ゆうくんと、私の部屋で一緒に過ごせて嬉しい」
「うん、俺も。結花の部屋、綺麗すぎてホテルみたい」
「なら、ずっと泊まってもいいよ?」
「なっ!? ……本気にしてしまいそうなんだけど」
「え、私は本気だよ?」
「そ、そっか」
ほんと攻め攻めモード恐ろしい。呼吸するぐらい当然のことのように誘ってくるんですが。帰ってから荷物まとめて結花の家にお邪魔しようかな、って一瞬思ってしまった。
「あ、夏休み後半どこ行こっか」
「そうだねー、どうしよっか……」
眠気って唐突に襲ってくるよな。急に頭が回らなくなる。
起きてようとあがいたけど、俺の意に反してまぶたが閉じられていく。
「うーん……」
やっぱり寝落ちしてたわ。エナジードリンクが無かったからか。カフェイン必須だな。
「あ、おはよ」
目の前に結花がいる。え?
夢ではないよな。 ……あ、結花の部屋にいるんだった。
「え、ずっと起きてた?」
「うん、私の勝ちー!」
「まじか……。え、俺が寝てる間何してたの? 暇だったよね?」
「……何してたかは秘密。ま、ちょっと寂しくなったから、ゆうくんのことすぐ起こしたんだけど」
何してたのか気になるな。
寂しくなったから俺を起こしたのか。なんか嬉しい。
「ん……今0時か」
「うん、そうだよ」
「何か飲んでもいい?」
「うん! あ、私はゆうくんが淹れるコーヒーが飲みたいな」
ちゃっかり結花がリクエストしてくる。ま、俺も眠気覚ましにコーヒーとか飲みたいと思ってたけどね。
「ゆうくんが家に来てコーヒー淹れてくれるなら、専用の道具買おうかな」
「え、でも高いよ?」
俺はコーヒーを淹れながら言う。
前、結花の誕生日にプレゼントで買ったマグカップに淹れて欲しいって結花に言われたから、それに注いでいく。
自分が買ったものが使われてるの、なんか感動するな。
「ゆうくんのコーヒーはそれだけの美味しさがあるから。……良い豆も買おう?」
「じゃあもっと美味しいの淹れられるようになるね」
話しているうちに、コーヒーを淹れ終わる。
「はい、どうぞ」
「わー、ありがと!」
「……美味しい」
結花は、コーヒーカップの底に手を添えて、上品にコーヒーを飲んでいる。
味わって飲んでくれてるのが分かる。
俺も普段より苦めのコーヒーを口に含む。眠気が飛んでいった気がした。
「……まだまだ夜は終わらないよ?」
「うん」
「今度はちゃんと起こすからね?」
すこし蠱惑的な微笑みで結花は言う。
俺は今夜は寝かせてもらえないみたいだ。
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