結花さん家お泊まり③
「え……?」
こないだ伊豆で見た、少し露出多めな水着を着た結花がお風呂に入ってくる。びっくりして、急いでタオルで体を隠す。
「一緒にお風呂入ってもいい?」
「え、でも俺タオル1枚……」
そう返すと結花は顔を少し赤くして、「スマホで調べたら、恋人どうしそれぐらい普通って書いてあった」って言う。
なんだそのけしからんサイトは。作った人にお金渡そっかな。
「ゆうくん、もうシャンプーとか終わってるか……」
「あー、うん」
男子の風呂は速いんです。
普段だったら10分もかけずに上がるのが当たり前ってレベル。昔は長風呂してたけど、最近はスピード重視なんだよ。
なんかチャンスを逃してしまった感がある。あ、これ、もしかして背中流してもらえたやつ? 今度からゆっくり体を洗おうと決めました。
「……なら仕方ないか」
そう言って結花は髪を洗い始める。長い黒髪が濡れて、雫が滴り落ちる。
見てはいけないものを見てるように感じる。
1度目を瞑ってみる。
泡を立てる音とか、ボディタオルが体と擦れる音とかが聴こえて、それはそれでイケナイ気分になりそうだった。俺は慌てて目を開ける。
「隣、入ってもいい?」
「お、うん」
ちゃぷんと、音を立てて結花は足を浴槽に突っ込む。綺麗な足を見てると、正直新しい扉が開きそうに……。
結花の肌がたまに俺に触れたりする。いつもより早くのぼせてしまいそうだ。
「結花の家のお風呂、泳げそうだね」
「ライト付けて窓の外眺めながらお風呂入ってると、ナイトプールにいるみたいに思えるからいいんだよね」
「そうなんだ、夜景綺麗だろうなあ」
そう言って俺は窓の外を見る。
今まで見たこともないような、鮮やかな夜景が眼下に広がっていた。
「なんか、東京が庭になったみたいな気分だね」
「あはは、たしかにそう思うときもあるかも」
「俺の家、見えるかなー」
「たぶん方向が違って見えないと思う……前探してみたんだけど」
「そっかー……って探したの?」
「うん」
結花と夜景を眺めていると、あっという間に時間は過ぎていった。
そろそろ上がろうかな。もうのぼせそうだし。ちょっと腰を浮かせる。
「そろそろ上がる?」
「え、もうちょっとゆうくんと入ってたいな」
「じゃあ、あと少し入ってようかな」
結花に優しく手を掴まれて、またさっきのところに座る。まだこれぐらいの熱さなら耐えれるかな……?
暑さの限界と、一緒にお風呂入ってたいという願望とがせめぎ合っている。
しばらくして、お風呂から上がった。
「あ、髪乾かしてもらってもいい?」
結花に言われて、俺はドライヤーを手にする。逆に俺が乾かしてもいいの?って聞きたい。
「自分で乾かすの、ちょっとやりにくいんだー」
「長さあるもんね」
そして、結花の滑らかな黒髪に触れる。なんだか不思議な気分がする。
「乾かすコツとかあるの?」
「んー、ドライヤーを真上から当てるとか?」
「へー、そんなこと気にしたことないな。ロングヘアってケア大変なんだね」
「まあ、でも私はロングヘアの方が好きだから」
「うん、俺も結花の髪型似合ってて可愛いと思う」
「えへへ、ありがと」
ちょっと恥ずかしがってくれるかな、って思って本心からの言葉を言ったけど、そんなに幸せそうな笑顔されたらこっちが恥ずかしくなる。もちろん嬉しい気持ちの方が大きいけど。
「お泊まりの楽しみって言えばここからだね」
「うん、夜更かしとかする? 結花は早く寝てしまいそうだけど」
「えー、ゆうくんの方が先に寝てしまいそうだから、私が起こしてあげるね?」
少し火照った表情で言う結花に、深い意味はないよね?って確認したくなる。さすがにないとは思うけど。
結花の家で夜を過ごすことにわくわくして、俺はテンションがおかしくなってるみたいだ。
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