家でかき氷
数日前、俺たちは伊豆から帰ってきた。
伊豆では花火とか、海遊びとかして楽しかったな。
まだ後ろ髪を引かれる思いなんだけど。来年まで待ちきれないな……。
自然と遠い目をしてしまう。
ところで、夏の東京は暑すぎる。クーラーをガンガンに効かせてしまったら最後、もう外に出れないよ……。
伊豆は風が吹いてて涼しかったなあ。また遠い目をする。これ無限ループ突入しちゃうかも!
ついつい扇風機の風が当たるところでごろごろしてしまう。結花がいるのに。
やっぱ慣れって良くない面もあるな。
そう思って、すっと座り直す。
「あ、気にしなくていいよ」
冷凍庫からアイスを持ってきて食べてた結花が言う。
俺もアイス食べたいな。
「……!」
ここで俺の頭に名案が浮かぶ。
……かき氷、いいんじゃないか?
まあもちろんかき氷機なんてここにはない。ミニマリスト(?)だからね!
というわけで買い物に出掛けよう。暑いけど……。
「あ、ちょっと買い物行ってくる」
「分かった! じゃあお昼ごはん作っておくねー!」
「ありがとう!」
いつものスーパーにはかき氷機はなさそうだな。ちょっとだけ家からの距離は伸びるけど、少し大きめのところに行くか。
「お、あった!」
かき氷機って、手動と電動のどっちがいいんだろ。ま、安い手動にするか。手動の方が趣もあるし。
手動のかき氷機の箱とかき氷シロップを持って、レジに向かおうとする。
「おー、優希!何買うんだ?」
聞き慣れた声がした。
「かき氷機」
「急になぜ」
「いやー、東京暑いし、結花がアイス食べてるの見たらかき氷作ろうかなって思って」
「朝から一ノ瀬さん来てるんだな」
翔琉がちょっとニヤニヤして言う。やはりラブコメに対する反応速度は世界一だ。(俺調べ)
「夏休みどこかでデートしたのか?」
「ああ、海なら行ったぞ」
「海!?」
おいおい、ここ店内なんですが。イケメンが大声出して注目されていやがる。
「海か……水着姿拝めたのか……ラブコメしてんなあ……」
翔琉は1人で俺たちのラブコメを想像したみたいで、尊さと自分がラブコメしてない悲しさを同時に感じてて唸ってる。
「ま、夏休みのラブコメイベント楽しんでな」
そう言って翔琉はじゃあな、と手を振る。
「あ、結花からメッセージ入ってた」
結花が買ってきてほしい食材送ってきてた。
持ちきれないので、買い物カゴを手にして、それらも買ってから帰路についた。
「ただいまー」
「おかえり! 重かったよね? ありがとう」
玄関で結花がエプロン姿で出迎えてくれる。うっ……尊い。おっと、天井仰いでた。
「かき氷機買ったから、かき氷作ろう!」
そう言ってかき氷機を取り出す。
「これでかき氷作れるんだねー。自分でかき氷作るの初めて!」
まじまじとかき氷機を眺めて結花が言う。
製氷機の氷を入れ、ガリガリ音を立てながら砕いていく。
器にきらきらした氷の山ができていく。
「おー、すごい!」
結花は興奮気味だ。目が輝いてる。
「シロップも色々あるから、どれでもかけていいよ」
ブルーハワイとかいちごとか色々買ってきた。練乳もある。練乳は必須ですよね。
「ん、美味しい!」
わあ、冷たいって小さな声で言ったのも聞き逃さなかった。削った甲斐がありました。
俺、かき氷屋しようかな……。
お客さんは結花限定で。
俺は自分がかき氷食べようとして買ってきたのも忘れて、結花が食べる分の氷を削ってた。
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