結花と海遊び
結花に連れられて、海上のバルーン遊具の近くの岸までたどり着く。
ビーチから50mぐらい泳がないと行けないのか。ま、ライフジャケットあるなら大丈夫か。
あ、日本でここが初めてらしいです、この海上遊具。
結花と一緒に滑り台から海に飛び込んだり、トランポリンで跳ねたりしてみる。
……なんか勝負やりたいですね。さっきの水のかけあいで灯った闘志がまだ燃えている。
「押し相撲、やらない?」
内容が男子のノリでした。俺が言ったんだけど。
あ、ちゃんと手加減はしますよ! 胸が揺れるとか考えてない……嘘です。
「いいね、やろっか!」
1人分しか横幅がないスペースで押し合いをする。
俺が少しだけ手加減をしているからか、拮抗した戦いになっている。
「おわっ!?」
結花にすっとかわされて、バランスを崩して海に飛び込む。海の中は澄んでいて、底の方までよく見えた。
「ぷっはぁ!」
「あはは、私の勝ちだね」
浮き上がると、にやっといたずらそうに笑って立ってる結花の顔が見える。やられた……。
「次は鬼ごっこしない?」
「いいよ」
「また勝っちゃうよ?」
結花はニヤッと強敵がしそうな微笑みを見せる。
「俺も頑張る」
ほんと勝負事になったら表情変わるんだよなあ、そこもいいところなんだけどね! 結花の身体能力からして、手加減なしでもいい勝負になるかもしれない。
水しぶきをバシャバシャ上げながら遊具の上を走り回る。
「おっしゃ、タッチ!」
結花の肌に触れると、ふにっとした感触がした。
「ふぅ……ゆうくん、速いね」
「お、おん」
この挙動不審の原因はタッチの際に結花の柔らかい肌触ったためです。肌白いし、柔らかいしで……マシュマロのごとし。
「はしゃぎすぎたねー」
「うん、そうだね!もう時間だし、戻らないとね」
「う、うん」
そう言って泳いで岸まで戻ろうとする。
「あ、ちょっと待って……!」
後ろからがしっと腕を掴まれた。
うおっ、びっくりした……。
結花の方を振り向くと、真っ赤な顔をしていた。
「え、どうしたの?」
「水着の紐が……」
え。そんなに人いないとは言え、何人かは周りにいるんだけど……。
もし「事故」が起きてしまったらいけない。
俺が結ぶしかないということですね。
遊具の陰になってるところまでゆっくり泳いで行って、状況を確認する。
……なるほど。
背中の紐を結んだらいいんですね!
まあ、ミッションはそういうことだけど簡単ではない。
結花が水着が落ちないように胸のところ押さえてるの、正直見てて俺の心臓が飛び出そうになる。見えたらいけないところがギリ見えそうなんだが。
俺も急いで結ぼうとするけど、結花の肌が触れて緊張してしまう。やっべ、紐落としそうになった。
今度こそ紐をしっかり掴んで蝶々結びをする。もちろん二重で。
「む、結び終わったよ?」
ついきょろきょろしながら言う。
圧倒的挙動不審。まあしょうがないよね? 高校生男子では当たり前の反応かと。
「あ、ありがと。 ……またほどけたらいけないから、見てもらっててもいい?」
「うん」
「二重で結んだから大丈夫だと思う」とは言わなかった。
まあ頼られてるからね。いいとこ見せなきゃね!
行きよりも帰りの方が長く感じられた。もちろん良い意味で。
「ありがとう、ゆうくん」
「いや、お礼言われることでもないよ。 結花と海で遊べて楽しかった!」
「うん、私も」
そして結花は「じゃあ、着替えてくるね」と言って手を振り、更衣室へと向かっていった。
俺は結花が見えなくなるまでそのまま立っていた。
「また来年、結花とこんな風に海遊びできたらいいな」
そう呟いて、俺も男子更衣室に向かった。
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