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2人だけの花火

「ゆうくんは何食べたい?」

「そうだなあ……伊豆っぽい料理?」


そう言ってから、我ながら難しいリクエストだなと思った。伊豆っぽいってなんだ。言った俺でも分からない。


「海鮮丼とかは?」


結花はしばらく「んー」と悩んでから俺のリクエストにぴったり合った案を出してきた。


「お、いいね! 美味しそう!」


しかし、食材はあるのだろうか。

一抹の不安が浮かぶ。そんなに簡単に海の幸って集まらないよね……。


「じゃあ準備するね!」


そう言って結花はすたすたと台所に向かう。


冷蔵庫を開けるとそこには……海の幸が詰まってました。なぜ?


「あ、これ?」


俺の不思議がるような目線に気づいて、結花が言う。


「捕ってきてくれたんだって」

「まじか……!」


結花の親戚さん、ほんとすごいです。別荘持つぐらい大金持ちな上に、美味しそうな魚一杯捕まえるとか。

もしかしてマグロ漁師なのかな?


結花はスムーズな手付きで魚を捌いていく。かっこいいな、俺も三枚おろしとかやってみたい。

それ、俺の現在の家事能力からしたら序盤の装備でラスボス倒しに行くぐらい段階すっ飛ばしてるんだよな。


「できあがりー!」


俺の前に山盛りの海鮮丼が出される。


「すご……」


たぶん今の俺の目は輝いてる。なんだか刺し身も輝いて見える。


「いっぱい食べていいよ?」


結花が優しく言ってくれる。もちろん食べ尽くします。


「「いただきます!」」


「どう、美味しい?」

「もちろん! 初めて海鮮丼食べたけど、なんか宝石箱みたいだね」

「喜んでもらえたなら良かった!」


柔らかい刺身を心行くまで味わった。



「じゃあ、砂浜行こっか」


食べ終わって片付けまでし終えたので、夜の砂浜に出かける。


歩いて数分で、波打ち際が見えてくる。


夜の砂浜には俺ら2人以外、誰もいない。

この景色を独占できるの、気持ち良すぎ。独占禁止法とかに引っ掛かりませんかね。


波の音が安らぎを与えてくれる。しばらくの間、俺たち2人は寄り添って海を眺めた。


「そろそろ花火する?」

「うん! いっぱい持ってきたから色々やろう?」


そう言って俺は大量の花火を袋から出して、並べる。


「こんなにやっていいの?」


弾むような声で結花が言う。


「なんでもやっていいよ!」


そう言いつつ、俺はろうそくを立てて火をつける。ああ、実家近くの空き地で花火してたの懐かしいな。たしか石とか熱してたような。良い子は真似しないで下さい。


最近は花火も色々種類あるんだよね。色が途中で変わるのとか。見てても楽しめるようなの。


「ゆうくん、こっち来てー」

「おー!」


はしゃぎ気味な結花のとこまで花火を持って走っていく。


「火、分けてもらってもいい?」

「いいよー!」


めっちゃこの感じ懐かしい、火付いてる人のにまだ新しい花火近づけて点火するの。


「わ、付いた!」


俺の持っていた花火のオレンジ色の炎の中に、紫色の炎が燃え上がる。


「……綺麗だね」

「うん」


2人で勢い良く燃える炎を眺めた。


気付いたら花火もだいぶ売り切れて、線香花火ゾーンがやってくる。


「玉落とさなかった方が勝ちね?」

「いいね、やろう」


これも懐かしい光景だ。


(風吹かないで……)と願いながら線香花火をする。


線香花火の明るさで結花の顔が照らされて見える。玉を真剣そうに見つめてた。俺がそんな結花を見てると、照れたように笑う。


いつまでも火が消えなければいいのにって言いそうになる。この2人の時間がずっと続いてほしい。


「あ、花火ちょうどあと2本だね」

「そうだね」


同時に火をつけて、燃えてる玉を見守る。結花は俺の隣で寄り添うような格好で、心が暖められる。


「私、好きだな」


 結花は火の玉を見つめながら、呟く。


 「え?」

「ゆうくんと一緒に花火するの。まあ、ゆうくんとなら何でも楽しいって分かってるけど」


「来年も花火しに来ようね?」

「もちろん、あ、買いに行ったら明日も出来るよ?」

「あはは、そうだね」


そうだ。今持ってる花火は消えてしまっても、この暖かい気持ちは消えないんだ。当たり前のことだけど、大切なことに気付いた。


明日も花火をしようと思いながら、今持ってる花火の玉を落とさないことにも集中した。


いつも読んでくださりありがとうございます!


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