二回目の夏
「ゆうくん、一緒に帰ろう?」
「もちろん! あ、新作のスタバ出たらしいから一緒に飲みに行かない?」
「うん!」
俺は急いで帰りの準備をして、結花をナチュラルにスタバに誘った俺を、締め上げるタイミングを見計らっているらしい男子たちでむさ苦しい教室を逃げるように後にする。
付き合ってるんだからいいだろ……?
さっきまでの光景とは対照的に、爽やかな青空にぽつぽつと積雲が浮かんでいて、セミの鳴き声というBGMがある夏らしい風景の中を結花と歩く。
今年も夏がやって来た。
うん、やっとだ。やっと一学期が終わった……!
高2の夏。高校生活で一番楽しめるであろう夏休みだ。
まあ内部進学するなら来年も楽しい楽しい夏休みが保証されるわけだが。多少は勉強しないといけないだろうけど。
遊び尽くすために、宿題は配られた日に8割は終わらせてある。
でも小論文とかに最後の方苦労するんですよね、存じております。追い込まれたら頑張るのでご安心ください。結花と一緒にやれば終わるはず……いや、結花はもう終わらせてしまってそうだな。
「ゆうくんは今年の夏休み、どこに行きたい?」
「そうだねー、今年は海行きたいな」
スタバでフラペチーノ片手に話し合う。わあ、JKやってる!
……やってねえよ。
1年前は海行けなかったので行きたいです。ほんとに。結花の水着姿拝みたi……お、おっと。欲望がダダ漏れだ。
夏の暑さで、俺の脳のタンパク質は壊れてしまったのかもしれない。
「うん。去年は行ってないからね。……あ、私の家にも来る?」
あっぶね。突然の提案にびっくりしてフラペチーノこぼしかけた。お高いんだぞ、気をつけような、俺。
「たぶん2日ぐらいしか来れないと思うけど……」
「いやいや、2日でも行けたら嬉しいよ!」
「なら、良かった」
少しだけ残念そうな表情をしていた結花がぱっと明るい表情になる。ころころと表情を変えるのは、見ていてほんとに可愛らしい。
結花の家、そこらへんの高級ホテルより綺麗そうなイメージだな。タワマンだし、夜景とかすごく綺麗なのでは? 10万ドルと言わないぐらい。
楽しみすぎる。
「あ、海だけど、伊豆に親戚が持ってるコテージがあるからそこに行かない? 頼んだらいいよ、って言ってくれると思うから」
「おー、伊豆かー、いいね……って、親戚が持ってるの!?」
「うん」
なんで親戚さんコテージとか持ってるの。コテージとか某RPGでしか聞いたことないよ。あのテントの上位アイテムでしょ?
一ノ瀬一族の実態が分からない。どうなってるんだ。
とにかく、そんなところに泊まらせてもらえるのはめちゃくちゃ有難いです。ありがとうございます。
「じゃあ決まりね!」
結花が手を合わせて楽しそうに言う。
今年の夏休みも去年に引き続き、お楽しみがいっぱいらしいです!
俺の家まで帰りながら、夏休みの予定の話の続きをする。
「ゆうくんは今週末空いてる?」
「うん、空いてるよー」
「じゃあさっそく海行こ?」
「おっけー!」
帰って夜ご飯食べてすぐ準備しよ。まだあと何日かあるけど。準備する時さえ楽しく感じられるよね、旅行の前とか。
「あ、夜ご飯何がいい?」
結花が夜ご飯を作るのはさも当たり前のことのように聞いてくれる。
「んー、ハンバーグ食べたいな」
「ハンバーグね、わかった! じゃ、スーパー寄って帰ろう?」
「うん、荷物持ちなら任せて!」
そしてスーパーに立ち寄る。スーパー行くの、結構楽しいんだよな。え、なんでそれならいつも行ってないのかって?
……時間がないからっす。あと1人だと寂しいから。
帰り着いてすぐに結花が調理を始める。
俺はハンバーグに合うサラダを作る。
キャベツの千切り、ちょっと上手くなったかな。また前よりも成長しているのを感じる。
「どう、美味しい?」
俺がハンバーグを頬張るのを、結花は食べる手を止めて眺めながら言う。
「うん、もちろん!」
夏休みはいつもこんな感じで美味しい料理が食べられると思うと初日から幸せだ。
「今日はありがとう」
「うん、こちらこそ!」
結花を家の前まで見送ってから、家に戻り伊豆行きの準備をする。いろいろ持っていこ。前買ったボードゲームとか。無論、水着も忘れずに入れなければ。
ワクワクしながら荷物をバッグに詰め込んだ。
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