夏風邪にご注意を
「あれ……?」
体育祭が終わって数日後の朝、起きると、なぜか一歩目を踏み出した床がふわふわしているように感じられた。
起き上がってからの足取りがおぼつかない。しかも熱っぽい。
「体温計なんか持ってないぞ……」
今まで体調を崩したときのこととか考えてなかったな。もう外に体温計を買いに行けそうにもないから、今さらなんだけど。
「とりあえず学校に連絡入れるか……」
なんとか机の上にあるスマホを捕まえて、電話しようとしてみる。上手く頭が働かないまま、電話番号を入力する画面を開く。
「あ、学校の電話番号知らない……」
わざわざ学校のホームページを調べてから電話する。
電話の向こうの担任にも心配されるレベルで、俺は頭が回っていない。
電話をかけるだけでかなり体力を使ってしまい、俺は寝床に倒れこむように寝転がった。
「あ、結花にも連絡しなきゃ……」
俺が学校に行けないのに、結花にここまで来てもらうわけには行かない。少し遠回りになるはずだし。 それに、今の感じだと玄関どころかインターホンまでたどり着けるか分からない。
結花への連絡まで済ませると、ゆっくり目をつむった。
「……大丈夫?」
呼びかけられてるような気がして、ゆっくり目を開ける。
あれ? なぜかここに結花がいるんだけど。ん、なんでだろ。
全く頭が回らない。朝よりも体調が悪くなってるのかもしれない。ずっと寝てたからかもしれないが。
「ごめん、勝手に上がっちゃって」
「いや、ごめん。わざわざ来てもらって」
「あ、無理して話さなくてもいいからね」
俺が話し終えて咳こんだのを見て、結花が慌てて言う。
制服姿だからたぶん学校が終わってすぐに来てくれたんだろう。今何時か分からないけど。もしかしたらまだ午前中だったりするのかも。……それはないか。
「わ、だいぶ熱ある」
俺の額にぴたっと柔らかい手を当てて結花は言う。少しその手が冷たく感じられた。
「とりあえず、熱冷ますシート貼るね?」
「あ、うん。お願いします」
めちゃくちゃシートが冷たい。びっくりした。
結花は温かいお茶を入れて、それを俺に渡してくれる。
「なにか食べれそう?」
「んー、いちおう少しなら食欲あるかな」
「じゃあ、おかゆ作るね? 食べれそうだったら食べてね」
少しだけ起き上がって、お茶を飲んでから答える。
俺の答えを聞いてから結花は台所へと向かう。
しばらくして、結花は台所から出てきた。
「どうぞ、熱いかもしれないから気をつけてね」
湯気が昇っていて、温かそうなおかゆが渡される。
溶き卵とねぎ、そしてご飯から作られてるおかゆを一口食べる。
「どう? 食べれそう?」
結花は俺の一挙一動を心配そうに見つめる。
「……うん」
体の中がぽかぽかと暖かくなるような感じがする。さっき、少しだけ悪寒がしていたのも、今はもう感じなくなった。
「ありがと」
喉の痛みもあるなか、頑張って声を絞り出す。がらがらすぎて聞こえてないかも……。
おかゆを食べ終わると、また少し倦怠感が出てきて眠ってしまった。
「あ、やっと起きた。ゆうくん、うなされてたけど……大丈夫?」
俺が目を開けたのを見て、結花が言う。寝ている間に布団をかけてもらってた。それに、俺がうなされてたからか、俺の手をぎゅっと握って見守っててくれたみたいだ。俺の手にはその温かさが残っている。
俺が寝てから、どれぐらい時間が経ったんだろう。
「うん、さっきよりかは体調良くなったかも」
まだ少し頭痛はするが、喉の痛みは引いた。
「良かった! 念のため今日は泊まって様子見ることにするね」
「ごめん、いいの?」
「うん、大丈夫だよ」
「それぐらいなんてことないよ!ゆうくんは心配しなくていいから、病気治そう」とも言ってくれた。
夜も結花についててもらえることになった。
いつかその分俺も結花を助けようと、ぼーっとする頭ながら考えた。
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