結花の誕生日②
近くのケーキ屋に2人で向かう。
都会っておしゃれなケーキ屋多すぎだろ!人も歩けばケーキ屋に当たる、みたいな? ……テンションおかしいな、俺。
「どれにする?」
「あのフルーツいっぱいのケーキがいいな」
「俺もそれ美味しそうだなって思った」
2人の意見が一致したのでそれを注文する。
兄弟姉妹がいたりしたらケーキどれ選ぶかでもめたりするらしいですね、俺一人っ子だからそんなゴタゴタとは無縁だけど。
……それで半分チョコで半分ホワイトみたいなのがあるわけか、納得。
そういえば結花って一人っ子なのかな。あれ、どうだったっけ?
店員さんから大きな箱を受け取り、家に戻る。
「そういえば結花って一人っ子なの?」
「え、うん。いきなりどうしたの?」
「いや、きょうだいとかいたらケーキ選びでもめたりするらしいから。って、俺も一人っ子だから実際には分かんないけどね」
「きょうだいかー……いて欲しかったな」
結花は少し下を向いてうつむき加減で言う。確かに親とあまり関わりないのに一人っ子だと寂しいだろうな。
「でも、今はゆうくんがいるから寂しくないよ、弟がいるみたいで」
「俺、弟なの……?」
「私の方が誕生日早いし」
「あ、そっか」
やっぱり結花は強いな、と思う。俺にだけ一瞬見せた弱さもすぐ吹き飛ばしてしまう。
2人で笑いながら歩いてたら、いつの間にか家の前に着いてた。
「17歳になったのかあ」
「そうだね」
ろうそくを眺めながら結花が呟く。
結婚できるまであと1ね、いやなんでもないです。
結花と結婚したらどんな生活が待ってるんだろう。今までと同じように楽しいだろうなあ。一緒に通勤とかできたら最高では?
……なんで同じ会社入ることになってんの。
「じゃあ写真撮るね?」
「うん!」
ケーキが入るようにツーショットを撮る。自撮りにも慣れてきた。
うんうん、我ながらいい出来。
もちろん結花のバースデーハット被ったバージョンも撮る。
「火、消すね?」
「おっけー」
俺はそう言うと、スマホを置いて温かな光景を見守る。また心の中のメモリに保存されるものが増えた。
結花は、ふーっとろうそくの火を消していく。なんか直視するの恥ずかし。
「いただきます!」
俺はケーキを切る能力ぐらいはこの1年で身に付いているので、その腕前を遺憾なく発揮する。
「んー、おいし」
結花はとろけるような表情をする。見ているだけでこっちもお腹いっぱいになるような気がしてきた。
「ゆうくんも食べよ?」
「ああ、でも結花の分少なくなるから」
「大丈夫だよ」
結花はフォークにケーキを刺して俺にあげようとする。
「はい、弟くんは甘えてもいいんだよ?」
「……じゃあいただくね、お姉ちゃん?」
弟くんとか言い出したはずの結花の顔が真っ赤なんだが。でも、今後も姉属性の結花は見たいと思った。
甘い空気の中、同じぐらい甘いケーキの味がした。
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