結花の嫉妬
最近ゆうくんの様子がおかしいんだよなあ、と私は思う。
昼休みに可愛い女の子とどこかに行ってしまうの何回か見たり、平日あんまり一緒に帰れなかったり……。
なんか隠し事してるのかなーって。
初めてそんなことを思う自分に対する戸惑いもあった。
気持ちもなんかどんよりと重くなってきてる気がする。
「せーんぱい、一緒にお昼食べませんか?」
「いや、おい待てよ……!」
「恥ずかしがらないでいいですからー」
後輩ちゃんに半ば強引に引っ張られて、ジタバタしながら連れていかれるゆうくんをぼーっと遠くから眺める。
その後、ちょっとしたらゆうくんは戻ってきたけど。
「ねえ、花奈? ちょっと相談があるんだけど……」
「ん、どうしたの? なんでも聞くよー」
久しぶりに花奈と一緒におしゃれな喫茶店に入る。
フラペチーノとかじゃなく、なんとなくコーヒーを飲みたい気分だなあと思う。
とりあえず飲み物注文して、席でゆっくり話そう。
「……こんなことがあったんだけど、これって嫉妬、なのかな?」
「うん。あいつ、そんなひどいことを……!」
花奈はぐっとコップを握る手の力を強める。めしめし、って変な音が聞こえた。
「あ、いやいや! 付き合ってても他の女の子と話すことぐらいあるだろうし……そんなこと、私も分かってるつもりだったんだけど」
自分の心の中のモヤモヤした感情をなんて表現したらいいか分からないで、適切な言い方を探す。
「……なんか、遠くに行っちゃう気がして」
「そう思っちゃうよね……あいつ、結花を困らせるようなことはしないと思ってたのに」
「私の魅力が足りないのかな?」
「いや、そんなことは絶対ないから! 結花の魅力が分からないなら、あいつがおかしいだけだから!」
花奈は冷静さを失ってしまってるかのように、怒りのこもった声を出す。声は大きくないのに、すごく重い。
「どうしたらいいのかな」
ついつい、どうしようもなくなってそんなことを呟いてみる。
「ほんとに、魅力が足りてないなんてことはないからね! もう限界だと思ったら、本人に聞いてみたほうがいいと思うな。聞きづらいなら、私がそれとなく聞いてみるけど?」
花奈は早口で、私を励まそうとフォローしてくれる。
「じゃあ、ゆうくんに聞いてみてもらってもいい?」
「もちろん、結花のためならなんでもするよ!」
「ありがとう、花奈がいてくれて嬉しい」
「なんかちょっと照れるな」
話聞いてもらえて、ちょっとだけ心が軽くなったような、そんな気がした。
でも、結局は自分も向き合わなきゃいけないことなんだろうなとは思っている。今みたいに目を逸らそうとしてもダメだって。
「……でも、私にも足りないところあるよね? もっと好きって伝えないとだめなのかな?」
「いや、今のあれでもかなり伝えてると思うんだけど」
急にすっと真顔になって言われる。自覚なかったの……?って顔だ。
「まあ、あれで伝わってないなら一条優希は鈍感野郎ということだね。ほんとに。 ……あ、コーヒー全然飲んでないよ? 冷えちゃう」
「あ、ほんとだね、じゃあ、今からは一緒に美味しく味わおう?」
「うん!」
一緒に写真撮って、コーヒーを味わうことにした。
苦いようで、ほんのすこしだけ甘いような味だった。
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