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クラスマッチ①結花の活躍

「おはよー、ゆうくん」

「おはよー!」


朝から体操服で登校できるという楽さ。制服だと暑いからね。


しかし……。

結花の体操服姿は、正直ちょっと目のやり場に困ってしまう。いつもの制服より薄いから。


「どうしたの、顔赤いけど……?」

「あ! いやいや、なにもないよー」

「体調悪いの? 大丈夫?」


 結花は心配そうに俺を見つめる。


「ほんとに大丈夫だから、大丈夫だよ」

 「なら良かった」


体操服で涼しいはずなんだけど、少し暑く感じる。


でも、むしろ体調は良く……いや、なんでもないっす。


「先に髪結んでおこうかな」


そう呟くと、俺の目の前で立ち止まって髪を結び始める。


 ゴムを取り出し、はむっと咥えてから、髪をまとめ始める。


髪をまとめると、普段は隠されているうなじがあらわになる。

そして、長い滑らかな黒髪をさっき取り出したゴムで結ぶ。そのときに、体操服を着ているせいで腋がチラチラと袖の奥に見える。

その様子をじっと眺めてしまう。


「待たせてごめん。行こっか?」

 「あ、うん」


 結花が歩き出すと、リズムよくポニーテールが揺れる。




やはり普段見えないものがチラッと見えるのは世の中の正義では……!?

あ、なんか日本人ってそういうチラ見せみたいなの好きらしいです。じゃあ俺も典型的日本人だな。


結花は不思議そうに俺のほうを見つめていた。



教室に着くと、黒板に対戦表が書かれていた。


「あ、私たちのバレーの方が先だね」

「じゃあ応援行くよ!」

「うん、頑張るね」


 結花はにっこりと微笑んでくれた。



「やっぱ一ノ瀬さん格好いいなー」

「ほんとだよな、勉強もできてスポーツも……って完璧すぎんだろ!?」

クラスの男子たちの結花への賞賛の声が聞こえる。


ソフトボールの試合が始まるまで、俺たちは暇なので体育館でバレーボールを観戦する。


「いい流れ作れよー」

「男子こそ、私たちのあとに負けないでよね」


朝からみんな元気だなあ。


「優希、一ノ瀬さんに頑張れって言っとかなくていいのか?」

「え、朝学校行くとき言ったから……」

「何回言っても損しないぞ? 何百回応援されても嬉しいだろうから」

「そうなのかな」


師匠に助言を頂く。


「頑張れー!」

「下の名前も呼べよー、チキってないで」


でも、結花はこっちを振り返って嬉しそうな笑顔を見せてくれる。


「ほんとに好かれてるんだな」

「そうだといいな」

「もっと自信持てよ」

「痛って!?」


背中を思い切り叩かれる。気合入れにしても痛いぞ?


笛が体育館に鳴り響いて、試合が始まる。


中学のときのクラスマッチのバレーボールは、サーブゲーで正直なところ見ててあんまり面白くなかったけど、高校はレベルの違いを感じる。


橘さんが上手くボールを拾って、次に繋ぎ、そして結花が点を入れる。見事なまでの三段攻撃。


バレーボールって聞いたらイメージするような、強烈なアタック。

美しいとしか表現できない。


……俺のクラス強すぎない?


「強すぎない……?」

「俺らのプレッシャーやばいな」


男子勢には女子への尊敬とこれからの試合への若干の焦りが生まれた。


バレーボールチームは流れのままに決勝まで勝ち進む。


『ゲームセット!』


見事なまでに完全勝利を決めた俺たちのクラスのチームに決勝に出ていないメンバーが駆け寄る。

男子もその後ろに控えて、おめでとうと口々に言う。


結花はMVP的扱いをされていて、女子にしばらく囲まれていた。


やっと俺が声をかけられるタイミングが来た。


「おめでとう! 大活躍だったね!」


 汗をかいて火照った表情の結花にタオルを渡しながら言う。


「ありがとー!ゆうくんにそう言ってもらえるのが何よりも嬉しい」


ほんとに俺の心を温かくするプロだと思う。


「次は頑張ってね。応援してるから!」

「ああ、行ってくる!」


いつもなら出せそうにない力が出せそうな気がした。


いつも読んでくださりありがとうございます!


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