次はクラスマッチ
文化祭が終わって、まだテンションの高まりが残っているところにクラスマッチの要項が掲示される。
「男子はソフトボールなんだねー」
隣で眺めてた結花が言う。
「格好いいとこ見せてね、ゆうくん?」
結花はからかうように言ったけれど、その目は期待で輝いているような気がする。
マジで距離近い。呼吸するたびに、甘い香りが俺の鼻を通り抜けていく。
最近俺の家と学校での感じが変わらなくなってきてるよ?
嬉しい、嬉しいんだけど……
背中にヒヤッとしたものを感じて身震いする。
たぶん非リア男子の怨念です。
うん、間違いない。後ろを振り返るのは止めておこう。
「女子はバレーボールなのかー」
慌てて結花に話を振って、そっちに集中する。
「うん、頑張るから見ててね」
「楽しみにしとく」
頑張るとかいう次元じゃなく、大活躍する未来が見える。
結花は運動神経もいいからな。
待て待て。
バレーボールならたぶん髪結ぶだろうな。
いつもの長い黒髪が風にさらさらと揺られてる感じもいいけど、ポニーテールverも見れるってこと!?
……楽しみ過ぎます。
あと、大きな胸が揺れ……
って、今のナシ!ナシナシ!
「あ、次の時間体育だからそろそろ行くね?」
「おっけ」
教室が男子しかいない空間になる。
……全然「おっけ」じゃないよぉぉぉ!?
「俺らと楽しくお話をしようか、一条優希くん?」
肩に手を乗っけられる。 感情がこもっててすごく重いよ?
「朝から幸せそうだネエ」
「その笑顔がめちゃくちゃ怖いんだけど!?」
「朝からリア充見せつけられたらそりゃ絶望もしますよ、ははっ」
俺の周りに不気味な笑みを浮かべて、負のオーラを発している友達が集まってる。
やべ。
「まあまあ、クラスマッチで活躍したらリア充に近づけるかもよ?」
翔琉が怨念の塊と化した友達の肩を励ますようにポンポンと叩きながら、助け船を出してくれる。
「確かにそうだな!」
「おー、頑張ろうぜ!」
「優勝狙うしかねえな」
切り替えはやっ。
「いやいや、一ノ瀬さんからの声援は一条にしか向かないだろぉぉ!?」
「俺らには橘さんがいるぞ」
「たしかにそうだな」
浮かれているようだけど、男子たちの頼みの綱も頼りにならない気がする。それは言わないでおこう。
「まあ、とりあえずソフトボール頑張ろう」
「「「まあじゃねえよぉぉぉ!!」」」
男子たちの心からの叫びが教室中に響いた。
体育の時間はソフトボールをしたけれど、守備のときは強烈な打球が飛んできて、打者のときは内角の打ちにくいところばかりに投げ込まれたと感じたのはたぶん気のせいではないと思った。
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