文化祭の終わりに
「お昼あそこで食べない?」
「カフェかー、いいね」
俺たちの高校はクラス企画と、部活ごとの出し物もある。
カフェは陸上部の担当らしい。
「2人でカフェ行くのは夏休みぶりだねー」
「そうだね、懐かしいなあ」
「今年の夏休み、楽しかったなー。初めて家族以外の誰かと一緒に過ごしたかも」
「俺もそうかな、今までで一番楽しい夏だった」
初めてっていう言葉はかなり重みがある。
結花の「初めて」になれたのなら光栄です……!
「フランクフルト2人分でーす」
「ありがとうございま……す?」
店員やってたのは翔琉だった。
「おーおー、幸せそうにやってるじゃん」
結花に聞こえないように耳打ちしてくる。
「おう、で、その格好はどうした?」
「なんかコンセプトがメイド喫茶みたいなのらしくて
男子は執事みたいな服装になった」
「おー、似合ってるじゃん」
「ありが……ってそれ男子に言われても!」
翔琉はちょっと照れた(?)のか撤収していった。俺に褒められて照れるなイケメンよ。
「ゆうくん、食べないと冷めちゃうよー?」
「あ、ほんとだ」
目の前にあるフランクフルトに手をのばす。ほどよい温かさになったかな。
「友達と仲良さそうだね」
「うん」
結花は、翔琉が去っていったほうを見ながら言う。
「ゆうくん取られそう……」
「え、あはは、そんなことないよ」
「ライバルになるかも」
真面目な表情で深刻そうに言う結花に笑ってしまった。
あとで翔琉に伝えたらなんて言うかな。
想像するだけで面白い。
「最後は謎解きに行こっか」
「うん、面白そう!」
「んー、難しい……」
久しぶりに結花の集中した顔見た気がする。
最近俺へのデレが隠しきれていないようなので。
「私の顔眺めてないで、ゆうくんも考えて?」
「あ、ごめん、バレてた?」
結花は俺の視線に気付いたらしく、恥ずかしそうに顔を背けて言う。……真面目に考えるか。
何個か謎解きがあって、ナンプレとクロスワードは俺も考えられたけど、閃きが必要な問題の答えが出てこない。
「わかった!」
結花が先にひらめく。
え、俺が考えてないだけだって?
ソンナコトナイヨー?
「全問正解ですねー!記念に写真撮りますか?」
この企画には写真部が関わってたらしい。
「ゆうくん、一緒に撮ろう?」
「うん!」
プロっぽい重そうなカメラで撮ってもらう。
なんか緊張するなー。
肩触れるぐらいの距離だし。
めっちゃいい匂いする。スイーツみたいな。
「じゃあ撮りますよー?」
シャッター音が響く。
「綺麗に撮れました!今度現像してお渡ししますね?」
「「ありがとうございます!」」
写真を見るたびに、今日の文化祭のことを思い出せそうだ。
「そろそろ文化祭終わっちゃうね」
「まだ終わってほしくないなー」
この時間が終わってしまうのが寂しい。楽しい時間の方が短く感じてしまうのはどうしてなんだ、ほんとに。
俺は窓の外の夕陽をぼーっと眺める。
「今日が終わっても、明日からもゆうくんがいるから学校生活楽しみだよ?」
結花は俺の隣に並んできて、俺の顔を覗き込みながら言う。
「……!俺も結花がいるから楽しいよ」
「あと2年間も楽しく過ごせるなんて、幸せだね」
「うん、ほんとそうだね」
また結花との思い出の1ページが増えた。
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