優希、格好いいとこ見せる?
うぉぉ……。やっぱ暗いな。
少し足が進むスピードが落ちる。腰が引けそうになって、1歩の幅がとても小さくなる。
「どうしたの、ゆうくん?」
「おわっ、いや、何もないから大丈夫だよ?」
ん?って感じで顔を覗きこまれる。
めちゃくちゃ近い。事故でキスしてしまいそう。
平静、平静っっ!!ダサいところ見せられないよ。
「怖いなら、私の手握ってもいいよ?」
そう言って結花はキリッとした表情になる。
やっぱ格好いいっす。イケメンか。
「ゆ、結花こそ頼ってもらってもいいからね?」
「ふふっ、分かった。その時はよろしくね?」
クールに笑ってたけど、若干結花の声にも揺らぎを感じたような気が……。
怖いならいつでも頼ってね?(震え)
恐る恐る2人で進んでいく。
「ひゃっ!?」
いきなり結花が可愛らしい声で叫ぶ。
「どうした!?」
「肩に、なんだか冷たいのが……!」
俺たちがゆっくりと振り返った瞬間。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
ゾンビみたいなの背後に立ってるぅぅぅ!?
「は、早く行こ」
とっさに結花の柔らかい手をぎゅっと掴んで、小走りで狭い暗闇を抜けようとする。
追いかけてくるんですがぁぁぁ!? 暗闇に立ってるだけでも怖いのに、追いかけてくるなよ!?
「スピード上げるよ?」
「うん……!」
天井からぶらーんと釣り下がっている枝を掻き分けながら、結花の手をぎゅっと握ったまま逃げた。
ようやくお化け屋敷を抜ける。教室ってこんなに広かったっけ……?
「大丈夫?」
「うん」
正直2人とも疲れ果ててしまっている。
「……ゆうくん、かっこよかったよ」
「え……?」
「私のこと引っ張って連れてってくれたとき、
かっこよかった……」
結花は口元を隠しながらぼそっと言う。
「お、おう」
熱でもあるんじゃないかっていうぐらい結花の顔が赤くなってる。
お化け屋敷でのクールからのデレデレ。
ギャップが素晴らしいです。
お化け屋敷入った甲斐があったなあ。
あのゾンビみたいなの出てこなかったら、俺は結花のかっこよさを見せつけられるだけだったかも。
それはそれで、俺としてはとてもいいんだけど。
ナイスタイミング、ゾンビ!
ん?
さっきのゾンビ、もしかして「男」ではなかっか?
やっぱ全然ナイスじゃないよ。結花に触れたよなああああ!
つい、ぐっと拳を握ってた。
「どうしたの、ゆうくん? 次どこか行こ?」
結花は心配そうに俺のことを見つめる。
「あ、そうしよう」
クールダウンに成功。
天使のような表情を前に、俺は何に対して怒っていたのかも忘れて次なるお楽しみスポットを探しに向かった。
「あ、射的しない?」
「いいね、花火大会ぶりだねー」
3発勝負。
俺もいちおー全部的に当てる。隣にいる結花が近すぎて(甘い匂いした)緊張したけど、負けはなくなった。
「負けないから見ててね?」
有言実行の命中率100%。
「引き分け、だね?」
結花はどやーっと俺の方を見る。
「うん」
「来年の花火大会でもしようね?」
「もちろん!」
当然のように来年も一緒にいる宣言をしてくれる。
めちゃくちゃ嬉しい。
しかも本人は意識せずに言ってるし……!
そして対決を終えて中庭のベンチに座ったとき、例の少女がやって来た。
「おー、結花ー! と……一条くん」
明らかに後半はトーンダウンしていた。
でも、橘さんと仲良くなることは、今後の結花との付き合いの中でわりと重要な気がする。
(今は絶対無理だけど)相談したりとか。
午後もまあとにかく楽しもう。
そう決意して、3人で出店に向かった。
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