文化祭は始まる前から楽しい
文化祭当日がやってきた。
やはりワクワクしているのか、いつもより1時間ぐらい早く起きてしまった。
といってもいま6時ぐらいだけど。
遠足が楽しみすぎる小学生みたいなんだが。
ごろごろ転がってスマホに手をのばす。
んー、なんか通知入ってるなー。確認するか。
いきなりスマホが振動する。
……俺の友達に朝型の人いなかったよな? 翔琉も起きるの遅いし。
慌てて起き上がって画面を見る。
……結花だ!
「ごめん、朝早くから」
「どしたの?」
「文化祭、楽しみでいつもより早く起きちゃって……えへへ」
弾んだ声がスマホから聞こえてくる。
俺と同じだったのか。なんか嬉しいな。
「朝ごはん食べないで行こうと思うんだけど、どう思う?」
「あー、たしかに。お腹空かせて行った方がいいかもねー」
俺はいつもお腹を空かせて行っているような気がするが……。
「色々回ろうね?」
「もちろん!」
「おはよー、ゆうくん?」
ほんの10分前まで電話で話していた結花が目の前にいる。制服姿も当たり前に可愛い。
ふつーに他の高校生も着ている制服なのに、なんでこんなに綺麗に見えるんだろう。
最近は朝のお迎えも当たり前になってきたんだけど、この光景はいつも心が温かくなる。
「じゃあ、行こっか」
語尾に♪がついてそうな感じで言う。
「うん!」
『ただいまから、文久祭を始めます!』
朝9時。高々と文化祭の始まりを宣言するアナウンスが校内に響く。
そして俺たちは、案内係の持ち場に向かう。
「私たちの担当場所ってここだよね?」
「うん」
あんまり人が来そうにない気がする図書館の前。 案内板を持ってここで2時間立っておくのか。
まあ結花と一緒なら一瞬でしょ! 仕事という名のデートだし。
「午後どこ回りたいとかある?」
「んー、そうだねー。……ゆうくんとなら、きっとどこでも楽しいから、どこでもいいかな」
え、マテマテ。
甘々発言頂きましたぁぁぁ!
まだ今日なにも食べてないのに、お腹いっぱいになりそう。
人が来ないので、ずっと結花と話していると1時間半があっという間に経った。70分授業は長すぎて苦行なのに。
「あ、花奈だー!」
「あはは、早く来ちゃったあ」
そこには綿菓子を手にした小柄な女子がいた。またまた世の中の男子に刺さりそうな感じでいらっしゃいますねぇ。
それにしても橘さん、来るの早すぎない!?
あなたの担当時間まではあと30分もあるんだよ?
一緒に回る友達、結構いると思うんだけどな。
まあそれ言ったら綿菓子の棒で串刺しにされるだろうな。
「一条くん、仕事代わろっか?」
「えー、いや、時間通りまでやるよ」
「……」
ジト目を向けられる。その顔だよ。ほんと怖いっす。
俺からしたら少し気まずい30分が過ぎた。
「じゃあ花奈、あとでねー!」
「うんー!」
橘さんは大げさなくらい手を振ってくる。もちろん俺にじゃない。
さてさて、午後はどうやら邪魔が入るようなので、これからの2時間をどう使うかが大事だな。
俺たちは校内を歩き回って、色々な企画を観て回る。
「あ、あそこ行かない?」
結花が指差した先はーーー
お化け屋敷だった。
(そこですか……)
俺ほんとに暗いのキビシーんだよね。
しかし! ここで男を見せなくていつ見せるのか?
「怖いから……手、握ってもいい?」
って俺の妄想の中の結花がお化け屋敷で言ってる。
これは行くしかないっっっ!
「それじゃあ、入ろっか?」
色々な意味で声が上ずりかけた。
ウン、バレてないはず。
恐る恐る暗闇の中に足を踏み入れた。
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