お出かけと近づく文化祭
「あと12分か、普通に間に合うな」
俺はそう言いつつも、200mほど離れた待ち合わせ場所まで小走りで向かう。
あれが、結花だな。
たくさんの人が行き交う駅前でも、結花にはすぐ気付ける。
純白のワンピースを身に付けた天使が駅前に立ってるから。周りを歩く人たちも、結花に見惚れてしまって歩くスピードを落としている。
結花は俺の姿を視界に捉えると、凛とした表情から、ぱあっと嬉しそうな笑顔に変わる。
「おはよー、ゆうくん」
「うん、おはよー。ごめん、待った?」
「いや、大丈夫だよ。ゆうくんが来るちょっとだけ前に着いたから」
昨日果たせなかったお出かけデートをするため、俺たちは駅前で待ち合わせをしていた。
いつも通り10分前には天使が待ち合わせ場所にいた。
俺も早めに家を出ているはずなのにいつも待たせてしまう。
……それで、いつも翔琉とやってる謎テンプレをほんとにやってしまうんだよな、今度から15分前到着を目標にするか。
「……じゃあ、行こっか?」
「あ、うん!」
心配そうに結花に見つめられる。大きな瞳に吸い込まれそうだ。
ちょっと固まってました。
いかんいかん、他のこと考えてるかと思われるかも。
30分後、俺たちはなぜか100均にいた。
どうして買い物デートで100均にいるのかって……? 俺も分からない。
「何買うの?」
「来週から文化祭準備始まるから、友達に少しお使い頼まれたんだー」
「そっか……!」
文化祭というワードを結花から聞いて、わくわくしてきた。
高校の行事では修学旅行の次に楽しみだ。
しかも男たちで寂しく (いや、友達と見てまわるのも楽しいだろうけど!)過ごすこともない。
ていうか、結花から友達の話とか全然聞いたことなかったな。
基本的に男女両方から崇拝対象とされている結花は、あんまりフラットな関係を持ててなかったイメージだったけど、少し安心した。
「飾り付けってこんな感じの色紙とか買ったらいいかな?」
結花は悩みながら、使えそうなグッズをカゴに追加していく。
「うん、あとは……そうだなー、マスキングテープとか買ったらいいかも」
「そうだね、ありがと!」
どういたしまして……!
お礼を言って微笑む結花を見て、また俺は一瞬固まってしまってた。
100均での買い物を終え、俺たちは次の店を目指して歩く。
「文化祭、楽しみだね」
「うん!」
「……一緒にまわろ?」
「ぅえ!? う、うん。もちろん!」
当然のことみたいに結花が言ったので、嬉しいんだけど驚いた。
「今さらそんなに驚くことじゃないじゃん。……だって、私たち付き合ってるんだし」
結花は最後の言葉を恥ずかしそうに言うと、照れてるのを隠そうとしてか、一瞬そっぽを向いてから、向き直って俺をからかうように微笑む。
「そ、そうだけど」
「準備も一緒にやろうね?」
「う、うん。楽しみだね」
なんか俺だけ恋愛経験値ゼロのうぶみたいになっているんだが。
そろそろ格好いいとこも見せないとな。
俺が男としてのプライドを燃やしているのには気付かずに、「次行こう?」と結花は俺の手を引いた。
いや、俺がリードされてないか!?
……どうにかせねば。
可愛い感じの雑貨店とかを眺めて満足したので俺たちは家に帰ることにした。
結花の友達ってちょっと気になるなー。
いや、別にチェックしたいとかそういうわけではないですからね! 愛重彼氏ではないので!
でもついつい、帰り道に会話の流れが一瞬途切れたときに聞いてしまった。
「友達って同じクラスなの?」
「うん、そうだよ」
聞いた直後、俺の脳みそのギリ正常な部分が
「いや、文化祭の買い出し頼むならそうだろ」
って言ってくる。
しかし、甘々な結花に溶かされている部分が
「別に聞いてみたって良いじゃんー」
って言う。 ……いや、酔っ払いか。
でも俺にも女子の友達ができたら、結花の気持ちがもっとわかるようになるかも知れない!
適度な距離感の女子の友達が俺には必要なのかも! 頑張って女子の友達作ろう!
「じゃあ、今度紹介するね?」
「うん、分かった」
……このときの俺は舐めていた。
人間関係は今の結花との関係みたいに、わりとあっさりと上手くいくわけではないということを忘れていたんだ……!
いつも読んでくださりありがとうございます!
いつもより投稿遅くなってしまいすみません!
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