寝てる間に(結花ver)
「うーん」
なんか顔にこそばゆさを感じて、いきなり目が覚める。
また長い昼寝をかましてしまったなあ。
頭痛い。
「わ……おはよ」
俺が目を覚ましたことに驚いたように結花が声をあげる。
……ちょっとプク顔してません?
「ん、おはよう……ってもう夕方じゃん!?」
目を凝らして時計を見ると、針は17時半を示していた。
「うん、私もさっき起きたとこ」
そう言ってさっきまでは違っていつも通り聖女的微笑みを見せる。
「ごめん、今日はもうどっか行くには遅くなっちゃった」
「いや、謝らなくていいよ。私が先に寝ちゃったから」
「まあそれも俺が待たせすぎて……」
……あれ、それじゃあさっきプク顔してたのはなんだったんだろ。
「ほんとに大丈夫だよ? 嬉しいこともあったし」
最後の一言はものすごく小声だった。
結花は嬉しさと恥ずかしさが混じったような表情を見せる。
なにがあったか気になるなあ。
◆◇◆◇◆
「あれ……?」
あ、寝てしまってた。もう17時じゃん……。
隣ではゆうくんがぐっすり眠っている。
なんか守ってあげたくなるような顔だ。
好きな人がこんなに近く、手の届く場所にいるんだってことを改めて感じる。
ゆうくんの顔をじーっと眺める。視線を下げていったさきに、ゆうくんの唇がある。
「付き合ってたら、キスぐらいふつうにするのかな……?」
つい独り言がこぼれる。
間接キスはしたことあるはずなんだけど、ほんとのキスとなると……
そんなムードが作られるときもないし、そもそも緊張してしまってムリかも。
(でも、今なら大丈夫かな……?)
私は、ゆうくんにゆっくりと覆い被さるような体勢を取る。
ゆうくんは寝てるのに、やっぱり緊張する。
でもこのチャンス逃したらダメだって自分に言い聞かせる。
「うーん」
パッとゆうくんが目を覚ます。
慌てて顔をそむけて、「おはよ」って言う。
(びっくりした……)
でも、私が何しようとしてたかまでは気付かれてないはず……!
でも、タイミング悪いなー。
なんで今起きちゃうんだろ。
頭をフル回転させて原因を考える。
……髪が顔にかかっちゃったからかな? くすぐったかったのかも。
どうしよ。肩にかかるぐらいまでに髪切ろっかな。
いや、ゆうくんの好みを聞いてからにしようかな。
◆◇◆◇◆
「じゃあ、家まで送るよ?」
「あ、うん! お願い?」
「お願い」の言い方よ。学校で他の人には絶対見せないであろう表情を見れて幸せになる。
でもなんか結花も幸せそうだな。
ほんとになにがあったんだろ。
「どうしたの?」
「え、いや、なんでもないよ」
ちょっとテンパったような感じで返してくる。
「え、気になるな」
「……秘密」
そう言って、結花は軽い足取りで家へと歩き始めた。
明らかに幸せそうな感じで、頬が緩んでるのは突っ込まないでおこう。
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