嫉妬がひどいです助けて
「おはよ、ゆうくん……行こっか?」
「うん!」
聖女的彼女様のお出迎えがあるので、今日は早起き&スピード準備を完了させた。
もうちょっと学校まで遠くてもいいのにと思いながら、いつもより歩く速度を落とした。
「あ、ゆうくん学年1位だよ!」
廊下に掲示されている実力テストの順位表を指差して、結花は言う。
「結花も2位じゃん」
「んー……次は負けないからね?」
結花は少し頬を膨らませて、しっかり負けず嫌いなとこを見せてくる。
……なんか周りがうるさいような。気のせいかな。
「おはよー、優希。朝からラブコメイベントやってるねー」
「え?」
「俺は構わんが、というかラブコメイベント大歓迎だけど、周りが殴りかかってきても知らんぞ?」
俺は恐る恐る周りを見てみる。なんだか首がかくかく動いた。
「一条のやつ、一ノ瀬さんにゆうくんって呼ばれてやがる」
「なんだと!?」
「しかもいつもの敬語じゃないんだが」
「そんなことがあっていいのか、いや、良いはずがない」
(あ……やべ)
ついつい家とか帰り道で2人きりの時みたいに過ごしてた。
「ゆうくん、どうしたの?そろそろ教室入ろ?」
結花はそう言ってやわらかな笑顔で俺の手を握って引いてくる。
気持ちは非常に嬉しいんだ、でも今の状況でそれは……!
「「!?」」
周りの男子たちに親の敵を見るような目で睨まれる。
「やれやれ、これがラブコメ主人公の宿命なのかも知れないね」
翔琉は両手を広げて、やれやれ……と体でも表現する。
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃねえよぉぉぉ!?」
とりあえず逃げるように廊下を後にした。
……もう1人の当事者と親友が呑気すぎて困る。
お昼。この時間のために学校に来たと言っても過言ではない。
結花の手作り弁当が食べられるからね、しかも一緒に。
「どこで食べよっか」
「屋上がいいな」
「うん、そうしよー」
「じゃあ行こっか、ゆうくん?」
4時間目が終わるとすぐ、結花は弁当箱を手にして俺に話しかけてくる。
そして、ほんわかした感じで笑って、俺を連れていくんだけど……。
「あいつ、お昼も一緒に食べる気か?」
「一ノ瀬さん、何か弱み握られてるんじゃないか?」
「たしかに、その仮説はわりと合ってそうだな」
「そうじゃないと一条があんなに可愛い+格好いい一ノ瀬さんと話せるわけないからな」
「そこまで言うか!?」
同じクラスのかつて非リア同盟を誓いあった男子たちの嫉妬の声が聞こえる。
さすがに言い過ぎじゃないか、と思って俺は言い返す。
「ま、とりあえず」
「「一条シメるか」」
俺の発言はもちろんスルー。え……俺さっき冗談っぽく言ったよね? そんなに本気で相手するの?
「いや、物騒なこと言わないで!?」
今後の学校生活がちょっと、いや、だいぶ心配になってくる。
「どうしましたか?」
ほんとに何が起こっているか分かっていない風で一ノ瀬さんが男子たちに声をかける。
「あ、いやー、なんでもないよ?」
「うん、なんでもないからお昼楽しんできて?」
「そうですか、ありがとうございます!」
素直すぎます。なんでこんなに純粋で可愛いの?
俺は確かに、男子たちが「一ノ瀬さんに声かけられたぜ」って言ってガッツポーズをしてるのを見た。
いや、チョロすぎるぞ?
まあ、チョロいのは俺も変わらんが。
俺は鼻歌歌いたいぐらいの気分で階段を2人で上がった。
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