表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/200

告白

「ごめん、お待たせ」


俺は屋上のドアを開けると、息を切らしながら言う。

景色を眺めていた一ノ瀬さんは振り向く。


「いえ、大丈夫です。

なにか先生に頼まれてましたよね?」

「あ……うん」

「なら仕方ないので。じゃあ、結果見せ合いましょうか?」

「そうだね」


「私はこんな感じです」


そう言って、一ノ瀬さんは成績が書かれた紙を見せる。

……国語が92、数学88、英語90。


ってことは……俺が3点上?


「優希くんはどうでしたか?」

「俺は、国語92、数学86、英語95だった」

「……じゃあ、私の負けですね。

おめでとうございます、優希くん」


少し間が開く。

一ノ瀬さんはちょっとだけ悔しそうに、それでも微笑んで俺を祝福してくれる。


「でも、次のテストでは、優希くんに負けませんから!」

「うん、俺も一発屋にならないように頑張るよ」

「ところで、勝ったら何か言いたいことがあるって言ってましたよね?」

「うん」


覚えててくれたことがちょっと嬉しい。いや、ちょっとどころではないか。


大きく深呼吸をする。

まだ明るい太陽に照らされて、屋上は神秘的な雰囲気に見える。

(うわ、なんか緊張してきた……!)


普通に話すときみたいに言えばいいのに。


「じゃあ、言うね?」

「はい!」


「一ノ瀬さん、いや、結花さん。

俺と付き合ってくれませんか?」

「……!」


あれ……? 一ノ瀬さんは驚いたような表情で固まってしまった。……もしかして詰みました?


「もちろんです!」

「……え?」

「こちらこそ、よろしくお願いします!

いや、よろしくね?」


一ノ瀬さんは陽の光を浴びて輝く黒髪を耳にかけながら、俺の顔を覗きこんで言う。


「ええっ!?」

「なに驚いてるの、優希くん?」

「いや……なんか固まっちゃったから」


俺がそう言うと、一ノ瀬さんはあどけない笑顔で笑う。


「私も嬉しくて、つい……あ、この口調変ですか?」

「いや、変じゃないよ!

それもかわいいから、結花さん!」

「あ、結花さんじゃなくて結花でいいよ?

私もゆうくんって言うから」

「あ、うん!」


ほんの少しだけ恥ずかしいような気もするけど、そんなのはまったく気にならない。


「夕日、きれいだね」

「ほんとだね」


ちょうどお昼の太陽と比べて大きく、明るくなって近付いて見える今の太陽みたいに、俺たちの距離も縮まったような気がした。





夏休みの間、私もしっかり勉強してきた。

今まで通り学年1位を取るために。

優希くんが、もし勝ったら伝えたいことがあるって言ってた。

それが何か気になるけれど、それで手を抜くのは私自身納得できないし、何より優希くんも納得しないだろう。



「……じゃあ、私の負けですね」


高校のテストで初めて負けた。

悔しいけれど、優希くんがなんて言うのかが気になって仕方ない。


「ところで、勝ったら何か言いたいことがあるって言ってましたよね?」



「結花さん、俺と付き合ってくれませんか?」


私はその言葉を聞いて、ハッと息をのむ。


そう言われた瞬間、優希くんといるときの楽しさだったり、胸の高鳴りが「恋」なんだって初めて分かった。


最初は家事代行のバイトと、そのお客さんって薄い関係だったけど、あのとき優希くんに見つけてもらえて本当に良かった。




「「これからもよろしくね?」」


「あ、ハモっちゃったね」

「付き合ってる感じがするし、いいんじゃない?」

「あはは、そうだね」


俺たちは顔を見合わせて、笑いながら屋上を後にした。


いつも読んでくださりありがとうございます!


ブックマーク、評価が励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ