秘策と甘い休憩タイム
家に帰り着いて、またペンを握って勉強し始めた。
朝スタバで全く勉強進まなかった分取り返さなきゃ。 とうぶんは摂取できたので、脳はしっかり働くはずだぞ。
この様子だと一ノ瀬さんに負けてしまって告白のチャンスを逃し続けるのでは……?と思っている皆さん。
俺には秘密兵器がある。
そう、こないだたまたま動画サイトの広告で記憶術を見つけてしまったんだ。
場所とストーリーがなんとか、だったっけか。
家事代行を見つけたときの感動には負けているが、
たまには広告もいい仕事するじゃんと思った。
これで暗記教科は余裕ですわ。
「どうしましたか? なんか笑ってますけど……?」
「あー、いや、なんでもないよ」
「気になります」
不思議そうに俺の様子を見ながら、一ノ瀬さんがペンを止めて言う。
あ、顔に出てましたか。
まあこの方法を一ノ瀬さんに知られてしまったらより差が広がってしまいそうだし、秘密にしておきたいんだよね。
「ほんと何もないから」
「怪しいですね」
一ノ瀬さんはちょっとジト目してくる。
え、新発見じゃないですか?
この表情は見たことなかった。わりとこの感じも可愛い。いつも可愛いけどね。
え、俺、デレ過ぎだって? 可愛いから仕方ない。
「まああと30分ぐらいしたら休憩する?」
強引に話題変えてみる。
「そうですね」
俺がちゃんと返さなかったから、少し頬を膨らませてちょっとプクッとした感じで言われてしまった。
その表情もいいんだよな……。
夏休みの宿題はそろそろ終わるかな。
小論文がかなりめんどくさいけれども。
さっさと宿題は終わらせて、休み明けテストの勉強しなきゃ。
国数英の3教科ですか……。 正直暗記教科の社会理科も欲しいなあ。まあいいや。
「そろそろ休憩する?」
言ってた時間になって、勉強も一段落ついたので俺は一ノ瀬さんに声をかける。
「はい、何か食べますか?」
「うん、お腹少し空いたかな」
「んー、じゃあマグカップケーキ作りますよ?」
一ノ瀬さんは何を作ろうかな、って感じに少し悩んだあと提案してくる。
「いいの? ありがとー!」
一ノ瀬さんは冷蔵庫からホットケーキミックスを取り出す。
俺、たぶん買ってなかったけどな。そもそも自分でお菓子を作ってみようと試みたことないので。
……もしかしてわざわざ持ってきてくれたんですか!?
物凄くありがたいです……!
一ノ瀬さんは手慣れた様子で、卵を割って牛乳とホットケーキミックス、それに砂糖を加えてかき混ぜる。
ケーキのもと作ってしまったら、あとはレンチンで膨らんでくれるんだな。
俺でも作れそう……!
希望を見いだせた。
「できました! どうぞ」
「ありがとう……いただきます!」
ふわふわな生地。いい具合に甘い。
いつも自分でこんな風に作ってるのかな。
「いつもこんな感じで作ってるの?」
「そうですね、クッキーとか作って食べます」
「まじか……!」
クッキーとか自分で作れるものなんだ。売られてるのを買うものだと思ってた。
「今度焼いてきて持ってきましょうか?」
「いいの? 食べたい!」
「私も優希くんに食べてもらいたいです!」
……天才美少女さんは俺に色々な意味で甘々な生活をプレゼントしてくれるみたいだ。
読んでくださりありがとうございます!
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