卒業旅行②
俺たちは和テイストなスタバでフラペチーノを楽しんだあと、電車で20分ぐらいのとこの旅館に着いた。
温泉街らしいし、お風呂を楽しんで明日に向けて力を蓄えるとするか。
「えっと……私たちが入れるのは、大浴場だよね。……ゆうくんと一緒に入りたかった、かな」
結花は俺の耳元で、艶やかに囁く。しかし、結花を照れさせるための秘策を俺は持っている。
「実は……結花と一緒に入りたいな、って思って、家族風呂予約してたんだ」
予約料金は別に必要だったけれど、結花と入るためなら安いものだ。
「ええっ!?」
結花にしては、思ってたよりも驚いているな。
「ど、どうしたの?」
「水着とか、持ってきてない……」
そういうことか……俺が全部計画立てるなかで一緒にお風呂入るって伝えるべきか迷って、伝えてなかったんだった。
「ごめん……どうする?」
「でも、ゆうくんと一緒に入らないっていう選択肢はない」
「そ、そっか……」
結局ふたりとも照れてしまった。両者負け。
俺たちはまだ恥ずかしさが抜けきってない中、家族風呂の扉をゆっくりと開ける。
お湯が半透明で良かった(?) いや良くないか……。
俺の欲はもうちょっと自制してほしい。
「その……恥ずかしいから、お風呂入る瞬間と出る瞬間は後ろ向いててほしい」
「わかった」
たしかに、タオルを普通の温泉に漬けるのは良くないからなあ。
「タオル抑えてないといけないから……髪洗ってもらってもいい?」
「お、おう」
結花はいつも通りの調子に戻ってきたみたいで、たぶん抑えながらでも洗えるはずなのに、俺に頼んでくる。もちろん喜んで引き受けさせていただきます。
結花の滑らかな髪を、撫でるように優しく洗う。
結花の髪は絹の糸みたいに、触り心地がとても良い。
「ありがとう、ゆうくん。私もゆうくんの背中、流すね?」
「お願いします」
帰ってからも毎日これでお願いします……。
俺たちは体を洗い終えて、お風呂に浸かる。言い付けどおり、俺は結花が巻いていたタオルをゆっくりと外すのは見なかった。
音だけでも、ドキドキするのには十分すぎたけれど。
「気持ちいいね」
「うん、体がほぐれそう。別にそこまで疲れてないけど」
これは長風呂コース確定だ。
俺たちは、今日1日の思い出を振り返りながら、お風呂を楽しんだ。
「ゆうくん、先に上がってもらえたりする?」
「あ、そっか」
俺は結花より先に風呂から上がり、もう一度軽くシャワーを浴びる。ちょっと煩悩も流さないとな。別に、結花の胸見てたとか言って……見てました。
それにしても、結花が恥じらうのは新鮮な気がする。恥じらいがないとか言ってるわけではないけど。それに、攻撃力高めなのは俺の前だけだし。
「今日はちょっとその……勇気がなくて。今度は頑張る」
「いや、大丈夫だよ」
恥じらう結花が可愛らしかった、って言ったらどうするだろうか。
軽くつねってきて、「……もう」って言ってくれたら最高。
お風呂から上がり、2人分並べられた布団に横たわる。
「明日はとっておきの場所に行こうと思ってるから、楽しみにしてて」
「うん。どんなとこに連れてってくれるのか……楽しみにしてるね」
「じゃあ、明日に備えて今日は寝よっか?」
「……え」
結花はそんなことありえない、というふうな反応を見せる。
「え?」
「今日はゆうくんに照れさせられてばっかりだったから……今からは私の番」
結花の負けず嫌いなところを刺激してしまったみたいだ。
「あの……お手柔らかにお願いします」
俺は結花に覆いかぶされながら、ちょっと笑って言う。もう聞こえてないかもしれない。
「ゆうくんが照れるまで、寝かせないから」
そのセリフで照れてるんだけど、これはカウントされないらしい。
反撃のチャンスはしばらく来なさそうだ。
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