高校最後の文化祭➁
文化祭2日目。昨日は一日中働いたので、今日は当番から解放された。
流石に高校最後の文化祭の最終日をたこ焼き作りで終えたくはない。楽しかったが。
「結花、行きたいところとかある?」
「んー、お腹空いたからなにか食べたいな」
「おっけー」
ただ、文化祭の出店で満足感ある昼食を、というのは難しい。焼きそばとかカレーとかぐらいか。
小腹を満たすためのものならポテトとかチュロスであったり、色々あるけど。
「あ、一条せんぱいと一ノ瀬先輩! いいところに」
「……なんだその格好」
「私たちのクラスはメイド喫茶やってるんですよー。お二人も来てくれませんか?」
姫宮が客寄せパンダってわけか。まあ一般的に見て可愛い方にはなるんだろうし、メイド服で強調されている胸の膨らみも男子高校生ぐらいなら悩殺できそうではある。
結花よりは小さいけど。
「どうする、ゆうくん?」
結花が俺に尋ねてきたのと同時に、俺のお腹が絶妙なタイミングで鳴る。
「メイド喫茶定番のオムライスがありますから、行きましょう?」
俺たちはメイド喫茶に連れて行かれた。悪質客引き反対。
俺たちが椅子に腰掛けると、姫宮は注文を聞くために近くまでやってきた。
……あれ、注文聞いてくるんじゃないの?
「……まだ感想を聞いてません」
俺が、メイド服の感想を言ってなかったことにご立腹だったようだ。
「まあ、に……似合ってるんじゃないか?
お客さんもたくさん来てるわけだし」
「せんぱいの感想はなんですか?」
姫宮はぐっと近づいてきて言う。これメイドと主人の距離じゃないと思うよ?
ええ……似合ってるって言ってるじゃん。そろそろ戦争が始まりそうだからさ? ちょっと遠慮してくれよ。
「私も着てみたいかな……なんてね」
結花の後ろにめらめらと立ち昇る闘志が見える。
「ちょうど一着余ってるので、着てみます?」
「いいのなら」
お昼を食べる、という本来の目的を忘れて、俺は結花が着替えるのを姫宮と一緒に待っている。
「姫宮も好きだねー、結花と争うの」
「それはそうです! 一ノ瀬先輩に勝たないと一条せんぱいは手に入りませんから」
「……姫宮のそういうまっすぐなところ、ほんとにすごいよな」
良い意味での諦めの悪さがあるというか。
「……自分の立ち位置が分かってても、諦めたくないときってあるじゃないですか。それに、一ノ瀬先輩とこんなふうに争うのも、なんだか楽しいなって」
「そんなもんなのか?」
「はい、あ! 一ノ瀬先輩がやってきましたよ?」
「めっちゃ可愛いです!」
「そ、そう? ありがとう」
結花は既に、メイド喫茶をやってる2年女子に囲まれている。
「どう、ゆうくん?」
「なっ……反則です。私でも大きい方のはずなのに」
結花は豊満な胸を張って聞いてくる。姫宮は、自分の胸と結花の胸の大きさを比べてなにか言っている。
「一番似合ってる。……これじゃ足りないな、結花は何着ても一番だよ」
「ゆうくんのその言葉が聞きたかったんだ」
結花は俺の感想を聞いて、満足して制服に着替え直しに行った。
「……もう一条せんぱいにはオムライスあげません」
「いやまあ……もともと分かってたじゃん。俺がなんて言うかは」
「にしても言い方が悪いです」
謎に不貞腐れてしまった姫宮と、オムライスを美味しそうに食べる結花を眺めた。
「またお越し下さいませ、ご主人様」
結局オムライスは頂けました。ありがとうございます。
メイド喫茶でドタバタしていたら、もう文化祭が終わる時間が近づいてきていた。
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