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高校最後の文化祭

 「文化祭、高校最後の行事だね」

 「うん、目一杯羽伸ばそう?」


 ダブルデートから帰ってからは、ひたすら勉強!勉強!だった夏休みが明けて2週間。

 高校生活最後の文化祭が幕を開けた。



 ……まあ、羽を伸ばすって言っても、出店の仕事はあるんだけどね。

 男子は基本的に射的の出店を担当しているんだけど、俺は結花の推薦でたこ焼き屋台のシフトに入った。


 俺は結花の隣で、たこ焼きを箸でつついてひっくり返していく。

 つい最近、たこ焼き器で鈴カステラを結花と一緒に作ったので、その時と同じ感覚だ。


 それがいい予行演習になったのか、あっという間に全てのたこ焼きをひっくり返すことができた。

 たこ焼き器2つ分を管理するのは、流石に難しかったけど。


 「料理もできるなんてすごいね、一条くん!」

 「ま、まあね?」


 クラスの女子が、俺の作業の様子を眺めて褒めてくれる。一年前もこんなことあったような。たぶん去年は同じクラスじゃなかったんだろう。

 ぶっきらぼうに言うのも違う気がして、少しドヤり気味に返してみる。


 「……私の方が先に知ってたんだけど」


 結花は、俺との距離を縮めて、すねたように言う。


 「結花のおかげだから」

 「う、うん。どういたしまして」


 結花は俺には聞こえないように言ったつもりだったのか、俺がそう返すと一瞬驚いたような顔になる。

 そのあとすぐ、嬉しそうな表情に変わる。


 ジェラってる結花も可愛いな、なんて思ってたら、俺たちの様子を天野さんと橘さんが後ろで眺めていた。


 もちろん、天野さんはニヤニヤして、橘さんは羨ましそうだ。


 「最近、一条くんの方が恋愛上手になってきてる気がするなー」

 「そう?」

 

 結花が接客をしているタイミングで、2人が近寄ってきた。俺はたこ焼きをひっくり返すタイミングを見計らいながら言う。


 「それだけ、結花が一条くんに素を見せてるってことなのかもしれないけどね」

 「そう言われると嬉しいな」


 俺は自分でも、ニヤッとしかけてるの絶対抑えられてないよな……と思いながら言う。


 「結構湯気出てるけど、大丈夫なの?」


 横からたこ焼き器を眺めていた橘さんが心配そうに言う。この人、普通に優しいところあるんだよなあ。

 ……って!


 「あぶねえ……」


 俺は2人にも協力してもらって、なんとか焦げる前にたこ焼きを全てひっくり返し終えた。


 「一条くんも恋愛上手ってわけじゃないみたいだね」

 「うっ……」


 化けの皮がはがれてしまった。


 「似たものどうしでいいんじゃないかな?」

 「結花と似てるの……羨ましい」

 

 俺はくすっと笑ってから、たこ焼きの焼き加減を確認し始めた。

 笑ったあと、思い切り横腹を突かれたのは痛かった。やっぱ優しくねえよ。


 


 「お疲れー」


 1日目の作業が終わり、俺はエプロンを脱ぐ。


 「一条くん、このたこ焼きってもらっていいの?」

 「おー、いいよ」


 時間ぎりぎりまで人が並んでいたので、最後まで作り続けていた分だ。


 「ん……美味しい」

 「お祭りで買うのぐらい美味しい! もっと食べたいな?」


 なかなか高評価をいただけたみたいだ。


 「あ、でも……5個ぐらい残しておいてもらえるかな? 食べてもらいたい人がいるから」

 「あ、うん!」


 俺はたこ焼きをパックに詰めて、このやり取りを聞いてたであろう結花に渡す。


 「あ、ありがと。……あとで一緒に食べよう?」

 「うん!」


 皆の前で渡したので、いつもの数倍恥ずかしそうに結花はパックを受け取る。

 


 「あんた、文化祭期間中だけは輝いて見えるね」

 

 逆にあなたは文化祭中、俺に毒を吐きすぎていませんかね。


 「結花にかっこいいとこ見せたいからね」

 「……ドヤ顔すんな」

 「うぐっ!?」


 また横腹に攻撃を食らった。橘さんはしてやったり、みたいな顔をする。理不尽……。


 「まあ、明日は結花と一緒に楽しんできなさい? ……私も、あんたのことは一応応援してるんだから」

 「唐突にデレないで、怖いよ? ……いえっ、なんでもありまs」


 最後まで言わせてよ……。


 「ゆうくん、一緒に食べよー? あ、花奈も来て?」

 「うん、行くよ! ほら、一条くん」

 「……もちろ、ん」


 今日の結論、まじで橘さん怖い。

 明日はいっぱい結花に癒やしてもらおう……と決めた。


 


 


 


 



 



 


 

 

 

いつも読んでくださりありがとうございます!


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