勉強合宿2日目
……おっし。
俺は起きてから時計を確認して、ぐっと拳を握りしめる。今日は早く起きれたぞ!
隣の結花は、まだ眠っている。俺は昨日結花の膝枕で寝溜めしてるから、その分休んでもらおう。
というか、俺の方が勉強進んでいないんだった。今日は……数学ⅡBでもやるか。
よし、やるぞ。
俺はエナジードリンクを体内にぶち込んで、ペンを握りしめた。
まだ6時かあ。早起きしたらいいことあるなあ。結花の寝顔も眺められたし。問題も結構解けたし。
あと、朝から勉強した、という事実が俺の自己肯定感を爆上げしてくれる。俺、偉い。
「結花、おはよー」
「ゆうくん、おはよ」
結花はまだ眠そうな声で朝の挨拶をする。パジャマが少しだけ乱れている。髪の毛も、ちょっとはねている。
こういうとき、声をかけたほうがいいんだろうか。デリカシーなさめだと思われるかな。
俺は結花の方をちらちら見ながら、ヘタレらしく悩む。
「……髪、直そうか?」
数分悩んだ末、ついに俺は結花にそう提案することに決めた。
「いいの?」
ぱあっと明るい表情になって、結花は言う。眠気はすっかり飛んでいったみたいだ。
俺はゆっくりと、艶があって綺麗な結花の髪を梳かす。いつもは、自分でしっかりお手入れしてるんだろうな。
ブラシで髪を梳いたあと、優しく髪を撫でる。
「えへへ。ゆうくんにやってもらえて嬉しい」
結花は、座ったまま振り向いて、俺の顔を見上げる。
「もう少しお願いしてもいい?」
「うん、いいよ」
結花は微笑んでお願いしてきて、俺は結花に微笑み返す。 やはり、早起きは三文の徳というのは本当だな、と思った。
……問題を開くと、急に現実世界に引き戻された感がある。くっそぉ。まあ少しの辛抱かな。今日のノルマは……あと5問。
「やっと終わったー!」
「じゃあ、お昼にしよっか」
結花は俺より先に今日のノルマ分を終わらせていたらしく、お昼ごはんを既に作っててくれた。……昨日の俺、ほんとに何もしてなかったな。
今日のお昼は、刺身盛り合わせが出てきた。やっぱり伊豆に来たら食べないといけないでしょ。
「今日の午後は何しようか?」
「うーん、そうだね……」
伊豆に来たからには海と言いたいとこだが……水着は持ってきてないんだよ。
「海、行こうよ」
結花から先に海に行くのを提案してきてくれた。
でも、水着はあるんだろうか。
「……水着はなくても、海は楽しめるよ?」
結花は楽しそうに、俺が気になっていたところを的確に突いて言う。
なにっ!? 思考が読まれているだと!?
……ってことは水着見たい、という願望もバレてるのか。
というわけで、俺たちは着替えて別荘から海まで歩いてやってきた。
透き通ったブルーの海を見ると、人は皆テンションが上がる。たぶん。
「ゆうくん、こっちこっち」
結花は浜辺の波打ち際まで、俺の手を引いて走る。
「うおっ!?」
「あはは、逃げろー」
結花はばしゃっと、水をすくって俺にかける。この感じ、前にも見たことあるな。
「やったなー?」
俺も海水をすくい上げ、結花のあとを追いかける。
俺たちは、息が切れるぐらいまで砂浜を駆け回って遊んだ。
「だいぶ濡れちゃったねー」
「えー、あ、うん」
俺は靴に絡まった海藻を払いながら返事をして、顔を上げる。
「……!?」
俺、そんなに海水かけてしまったかなあ。ちょ、ちょっと……直視しづらい光景が目の前にあるんですが。
具体的に説明すると、結花の白いTシャツがびっしょりと濡れていて、薄いピンク色の下着が透けている。
結花本人は全然気付いてなさそうだけど。
「そろそろ戻ろっか? 取り敢えずこれ羽織って」
「? うん、わかった」
俺はきょとんとした表情の結花にカーディガンをかける。
夏の太陽が燦々と輝くなか、俺たちは手を繋いでゆっくりと別荘まで帰った。
もちろん、別荘に戻ったあとはシャワーを浴びて、昨日夜できなかった結花の髪の毛を乾かす、というミッションを達成した。
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