高校最後の夏休み
「もうすぐ夏休みだよなー」
「あんまり実感ないけどなあ」
昼休み。次の時間の小テストに向けて勉強していた俺はため息をつきながら言う。
翔琉は内部進学狙いだから、正直俺よりかは勉強しなくても大丈夫だ。
……正直羨ましい。
「前、勉強合宿するとか言ってたじゃん」
そんな俺の空気を察したのか、翔琉は慌てて声をかける。
「うん。行くしかねえな」
家の机でずっと勉強できるとは思ってないし。
「俺たちも連れてってくれ」
「それはちょっと……厳しいかな。2人ともあんまり勉強しないだろ?」
天野さんも内部進学だろ。2人がいたら、俺も結花も遊びはじめてしまいそうな気がする。
……結花は、ちゃんとやろうと決めた分は終わらせてから遊ぶな。俺だけ遊び呆けてそう。
「それはそうだな」
「てか、結局付き合ってるの?」
まーた、まだ告白してない、とか言うんだろうな。
「うん。実は体育祭のあとにな……」
翔琉は爽やかに笑って答える。
「そうか、まだなのか。早く告白しろよー」
脳に翔琉の言葉が伝わらず、つい反射で口が動く。まったく、ヘタレなんだからさー。
「いや、付き合ってるってば」
「……はい?」
ようやく俺の神経はきちんと信号を伝えはじめたらしい。翔琉がようやく付き合いはじめたか。
「おめでとう。ラブコメライフ満喫してね?」
「おお、ありがとう」
悲願を達成した翔琉はとても嬉しそうだ。
「じゃあさ、夏休み遊びに行けたら行こう。俺と結花が休憩したくなったとき」
勉強合宿は一緒には行けないけど、遊び目的ならむしろいつでも行きたい。一回ダブルデートしてみたかったんだよ。
「楽しみにしてる」
親指をぐっと立てた翔琉に、俺は頷いて見せる。
「2人とも、なに話してるのー?」
天野さんが結花の手を引きながら現れた。今日もゆりゆりしてますね。
売店でなにかしら買ってきたみたいだ。
そして、結花は俺の隣の席に、天野さんは翔琉の隣の席にそれぞれ腰掛ける。
「夏休みのこと話してたんだー」
翔琉が天野さんにそう返す。
「ゆうくん、前に勉強合宿するって言ってたね」
「うん、俺は毎日でもいいかな」
そう言うと、結花は夏休み、待ちきれないねと言って微笑む。
「結花と一条くんみたいに私たちも合宿しようよ」
「お、いいね」
2人は勉強合宿じゃなくてイチャイチャ合宿になるだろ……と思いつつ、翔琉たちのやり取りをついニヤニヤしながら聞く。
「どこでやろっか? 伊豆?」
「またあそこに行けるのか。あそこなら、勉強以外も楽しめそうだね」
「勉強がメインだからね、ゆうくん?」
結花は、テンションが既に上がっている俺に微笑みかけながら言う。
「でも、高校最後の夏休みが楽しみなのは私も一緒」
結花も夏休みイベントを前に、胸を高鳴らせているようだ。
「あと、勉強の息抜きにこの4人で遊びに行けたら……なんて」
俺はさっき翔琉と話してたことを呟いてみる。
「「いいね!」」
結花と天野さんの反応も良かった。夏休みは勉強合宿&息抜きで!
……息抜きがメインにならないように気をつけます。
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