体育祭準備
集まりの翌日、俺たちは再び講堂にやってきていた。
俺と結花は隣合って座って、姫宮は後ろからつついてちょっかいかけてくる。
「……今から係決めていきまーす」
やっべ、何も話聞いてなかった。結花と一緒で、あとめんどくさくなければ、どの係でもいいよ。
「じゃあ、一ノ瀬さんと一条くん……それに、近くにいるから姫宮さんも用具係に任命します!」
……なんか楽しそうだな。
運営のトップみたいな女子にその場のノリで仕事を決められた。そんな適当でいいのか……?
「行くよ、ゆうくん?」
「そうですよ、せんぱい! 仕事なんですから!」
なんかノリノリな人が2名いるんですけど……!?
俺は目を輝かせた2人に連れられて、体育倉庫へと向かう。
「……用具係ってなにするの?」
俺の隣を歩く結花に聞いてみる。
「私も聞いてなかったです! まあ一条先輩と仕事できるならいいかなと」
自信満々に言うもんじゃねえぞ……?
「コーンとかの数が揃ってるか確認して、グラウンドの隅っこの方に出しておくらしいよ」
ちゃんと話を聞いていたらしい結花は俺たちに教えてくれる。
「お、ありがと」
「そういうわけですよ、ほらほら、急ぎましょう?」
……姫宮、置いていこうかな。結花の方に目をやると、結花も頷いていた。
「ここだね」
「うん」
今まで入ったことなかったな。コーンとか、あらゆる体育用具が山積みにされている。
「じゃあ、さっそく運んでいきましょう!」
姫宮がそう言って、俺たちはコーンを抱えて歩き出す。だからなんで姫宮が仕切ってんだよ。
「ここかあ」
俺たちは、用具を指定された場所まで持っていく。
そこで、他の運営の係の人たちが揃ってるか確認してくれる。
その作業の繰り返しだ。
なんか台車が壊れてて、一気に運べないんだが……。
「4回目……」
そろそろ疲れてきた。
「でも、なんだか青春っぽくて良いよね?」
結花は汗を拭いながら、爽やかな笑顔を見せる。青春っぽいと言えばそうかも。
急にやる気出てきた。
「あと一回行ったらいいね」
「そうだね」
姫宮がきちんと数を運営に伝えてくれて、俺たちは運ぶだけで良くなった。
……しかも姫宮置いていけたし。
「あそこだね、結構奥にあるなあ。俺、取ってくるよ」
俺は走り高跳びのマットの上に登って棚に手を伸ばす。
結花も登ってきてて、俺がバランスを崩さないように背中を支えてくれる。
「……もう用具足りてるよな、閉めよ」
ドア越しに運営の誰かの声が聞こえてきた。
……はい?
俺たちがあわててマットから降りようとしている間に、無情にも鍵がガチャンと閉まる音がした。
しかも、足音はどんどん遠ざかっていく。
早く帰りたいよな、気持ちは分かる。俺も早く帰って結花と夜ご飯食べたい。
……そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえよ?
「これって……?」
「私たち、閉じ込められちゃったみたいだね」
俺たちは苦笑いしながら言う。
どうしよう……と思うのと同時に、漫画とかでありそうな展開に正直どきどきする感じもあった。
いつも読んでくださりありがとうございます!
更新遅くなりました、すみません……
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