GW明け
ゴールデンウィークが明けてすぐの月曜日。朝から憂鬱だったなあ。
……今朝は結花のパジャマ姿見られなかったし。
「ゆうくん、今年の体育祭は一緒に運営やらない?」
結花は俺が帰る準備をしている間、教室の後ろの黒板を眺めながら言う。
「あ、もうそんな時期か」
俺は重たいリュックを背負って、結花の隣に並び、掲示物を一緒に読む。
「最終学年だし、やってみようかな」
正直俺は今まで体育祭に乗り気ではなかったけれど、運営やってみるのもありかなと思う。
ブロックリーダーとかみたいに闘志MAX、って感じみたいでもないみたいだし。それなら俺の居場所もありそうだ。
結花と一緒に仕事できるならいいか、一緒に仕事とか、前のバイト振りだなあ。なぜか知り合いがいるとこしか引き当てなかった時の。
「それなら、明日一緒に講堂に行こう?」
「わかった」
運営の希望者は明日の昼休みに講堂に集合らしい。なにするんだろう。
「運営の希望者はこれで全員か、良く集まってくれた」
他の学年の体育教師らしい、ガタイの良い先生が講堂を見渡して言う。
集まった生徒全員に説明が書かれたプリントが配られた。
そして口頭での説明。プリントあるからいいでしょ……と思う。
「……説明は以上だ、さっそく明日の作業からよろしく頼む」
作業は楽しそうだからいっか、と思いながら今日のところは解散する。
「じゃあ、教室戻ろっか」
そう言って歩き出したとき、後ろからバタバタと走ってくる足音と聞き慣れた声がする。
「せんぱいも運営やるんですね!」
「まあ、最後だしやってみるかなって」
結花は振り返って姫宮の姿を視界に捉えた瞬間、するりと俺に腕を絡ませてくる。そして、ぐいぐいと俺を自分の方に引っ張る。
柔らかいものが、俺の腕にばすばす当たってる。
結花は、「あっち行かないでね?」って感じの目をして俺の顔を見上げてきたあと、姫宮に冷たい視線を向ける。
……心配しなくても大丈夫だって!
「あ、一ノ瀬先輩もやるんですね」
さっきから隣にいるの気づいてただろ、とツッコミを入れたくなる。
「ゆうくんと一緒にやりたいな、って思ってね」
結花は思ってたことをそのまま口に出す。
もう火花がバチバチと散っているような。
「うん、俺誘われた側だしね」
「それってアピールですか、先輩方」
姫宮にジト目で言われる。うん、アピールだけど問題アリ?
「まあ、楽しみましょうね!」
姫宮は楽しそうに満面の笑顔で言って、手を振りながらどこかへ走っていった。
たしかに、楽しくはなりそうだ。……荒れそうではあるけれども。
「……最後の体育祭、楽しいイベントにしようね?」
「うん!」
俺は力強く頷く。最後の、って言葉で、もう3年生なのかという寂しさを少し感じた。
「今から楽しみだね!」
そうにっこり笑う結花を見て、その寂しさは一瞬で吹き飛んだ。
……正直、体育祭そのものよりも明日からの準備の方が何倍も楽しそうだな、とか思ったのは内緒で。
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