ペアルック御披露目
俺はお風呂に深く浸かりながら、考え事をする。
……さてと、ペアルック作戦決行しますか。
俺は先にお風呂に入って、上がったあと例のパジャマに着替えて結花を待とうというわけだ。
それだとパジャマを着ている姿を見られるかもだな。
やっぱり、結花がお風呂に入ってるのを待ってる間にぱぱっと着替えよう。
「結花、お風呂行ってきていいよー」
「ありがと、行ってきます!」
結花を笑顔で見送ったあと、俺はペアルックのパジャマを棚から引っ張り出して、高速で着替える。
あとはお風呂上がりの、パジャマに着替えた結花を待つだけだ。
……どんな反応するのかなあ。さっきからそれしか考えてないわ。
「お風呂上がりましたー」
ドアの向こうから、反響した結花の声が聞こえてくる。そして、ドアを開ける音がする。
「ゆうくん……?」
同じデザインのパジャマを着ている俺を見て、脳内にはたくさんのはてなが浮かんでいるみたいだ。
「ペアルック?」
結花は自分が着ているのと、俺が着ているのとの間で視線を往復させる。
「うん、そうだよ」
「……もっと、この服を着るのが嬉しくなったなあ。ありがとね、ゆうくん」
自分の服をじっくり眺めながら言ってくれる。これ選んで良かったな。
もう寝る時間だね、ということになって2人ともベッドの上に座る。
春になっても、まだまだ夜は寒いので俺はねずみ色のパーカーを羽織る。
「結花は? 寒くない?」
俺は袖から触りたくなるような腕が出ている結花に聞く。
「寒くな……いや、やっぱりちょっと寒いかも」
結花はなにやら、くすくす笑って言う。
「じゃあ、はい」
俺はゆっくりと、俺のより一回りだけサイズが小さいパーカーを結花に被せる。
「これで、お揃いだね?」
結花はファスナーを締めていないパーカーにくるまり、にまーっと緩みきった表情で、俺の方を見上げながら言う。
買い物の時に妄想してたのが現実になった。
「うん!」
想像していたよりも、ずっとペアルックパジャマを喜んでくれて、プレゼントして良かった、と強く思う。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ、結花」
いつも以上に幸せな気持ちで眠りにつくことができた。
「やっぱり暑いな」
午前2時。結花がすぐ隣にくっついて寝てくれているので、思ったよりも冷えていない。
「結花も、上に着てたパーカー脱いでるな」
……俺も暑いし、脱ぐか。
布団の横に、そっと畳んだパーカーを置いた。
「おはよう、ゆうくん」
「うん、おはよー」
目をこすりながら隣に目をやると、結花はまたパーカーを羽織っている。
結花が着ているパーカーは袖が少し長く、余っている。萌え袖、ってやつか。
……あれ、サイズ間違えたか?
「えへへ……いい匂いする」
結花は袖を鼻の方にやり、すんすんと匂っている。
「それって……?」
「あ、ゆうくんのだった」
サイズを確認して気付いたらしい。
「……ゆうくんに優しく包まれてる気がするから、着ててもいい?」
「……包んでくれる本人なら、目の前にいるぞ?」
俺は自分で言ってて恥ずかしくなり、口元がひくひくしそうになるのを頑張って抑える。
「なら……お願いします」
結花は俺の前にちょこんと座って、特等席をゲットした、と言わんばかりのご満悦な表情を見せる。
……朝から甘やかしコースでいいね?
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