結花の誕生日お祝い
結花の誕生日当日がやってきた。
俺は冷蔵庫に完成させたケーキを忍ばせて、結花がやってくるのを今か今かと待っている。
「おー、どうぞどうぞ!」
インターホン越しに結花の声が聞こえると、俺のテンションも上がってくる。
「おはよ、ゆうくん」
「うん!」
俺がわくわくする気持ちを抑えられない。結花もわくわくしてくれてると嬉しいな。
「どうぞ、座って?」
「うん!」
結花も期待に満ちた目をしているような気がする。俺フィルターでそう見えてるのかも知れないけれど。
俺は冷蔵庫を開けて、ゆっくりとケーキを取り出して結花のもとへと運ぶ。
「誕生日おめでと、結花!」
「わあ、ありがと! さっそくいただくね?」
「うん!」
自信作をゆっくりと美味しそうに味わってくれるのを見ると、苦労して作ったのが報われた気がしてくる。
「……私、幸せだね」
結花は半分ぐらい食べてから、優しく微笑んで言う。少し瞳が潤んでいるようにも見える。
「お母さんも、朝は家に居てくれて、祝ってくれたんだ。……大切な人2人に祝ってもらえて嬉しい」
そう言い終えると、スプーンについたホイップクリームをぺろっと舐めて、満面の笑顔を見せる。
……まだクライマックスじゃないんだよね、ペアルックのパジャマを渡してないから。
渡すタイミングをどうしようか迷っていると、結花が1口分のケーキを乗せたスプーンを俺に近づけてくる。
「嬉しい気持ちの、おすそ分け」
「じゃ、いただきます」
自分1人で作ったけど、そのことが信じられないくらい美味しかった。
「プレゼントもあるんだー」
俺は、結花がケーキを食べ終えてからしばらくして、クローゼットに隠していたプレゼントの袋を取り出す。
「ありがとう! 開けるね?」
「うん!」
結花は、ゆっくりとパジャマを袋から取り出す。
パジャマを広げて、前と後ろの両方を確認している。満足してもらえるといいな。
「夏用のパジャマとして使ってもらえると嬉しい、です」
「ありがとう、今日からさっそく着るね?」
……それは、お泊まりコースってことですか?
「一番最初に、プレゼントしてくれたゆうくんに見せたいから」
お泊まりコースだったらしい。どちらにせよ、誘おうとしただろうけど。
……ここでペアルックだと伝えないほうがいいのでは?
俺はそう咄嗟に思って、言葉が喉まで出かかっていたけれど、言うのをやめる。
結花は袋にまだ入っていたパーカー2着を続けて取り出す。
「あっと……それは外に出かけるときでも、家着でも、使えるかなって」
猫耳パーカーに気付いたときの反応が予想できないので、俺は若干緊張しながら結花の様子を見守る。
「……!」
結花は猫耳に気付いたようだ。そして、今着ている服の上から猫耳パーカーを被る。
「……どう?」
猫耳に手をそっと添えながら、少し恥ずかしそうに結花は聞く。
「ぶはっ……めっちゃ可愛い」
危うく血を吐くところだった。やはり可愛い+可愛いの破壊力は危険なレベルだ。
しかもちょっと上目遣いという……。
「パジャマも、着てみるの楽しみだなあ」
「俺も、結花が着るの楽しみにしてる」
俺が同じデザインのパジャマを着てたら、どんな反応をするのかも楽しみだ。
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