沖縄旅行①
俺たちを乗せた飛行機が宮古島空港に降り立った。那覇からは45分ほどの空の旅だった。
「宮古島上陸ー!」
俺は高めのテンションで飛行機から降りる。
「まあ、まだゴールじゃないんだけどね」
「伊良部島、だっけ」
さっき那覇で聞いたようなやり取りだな、と自分でも思う。
最終目的地の伊良部島へのバス乗り場を結花と探す。
島へは橋がつながっていて、車で行けるらしい。
「あれかな?」
「おっ、そうみたいだね」
結花は声を弾ませてバス停を指差す。結花の方を見ると、額に少しにじんだ汗が日光を受けて輝いていた。
「ふー、暑いね」
俺たちは汗を拭きながら、2人でバスを待つ。俺たちの知ってる3月じゃねえよ。
まあ暑いけど、海から吹いてくる風が気持ち良い。
結花は黒髪を結びはじめる。Tシャツの袖から、ちらっと腋が見えた。
目のやり場に困るなあ……。
とは言っても、やっぱりチラチラ見てしまう。
Tシャツは胸の破壊力も強調されてしまうし、露出度も上がるからなあ。それに久しぶりにTシャツ姿見たし。
……さてはお前、反省してないな?
「……?」
俺はずっと結花の動きを目で追っていたみたいだ、結花は飲み物をごくっと飲みながら、首を傾げる。
ポニーテールがそれに合わせて揺れる。
「いやー、なんでもないよー?」
俺は頭の後ろを掻きながら誤魔化そうと試みる。
「んー、なんだか怪しいなあ」
結花にじとーっとした目を向けられて、距離を詰められる。
鼻に甘い香りが届いた。
「私に隠し事はなしだよ、ゆうくん?」
結花は髪をゆらゆらと海風になびかせながら、爽やかに笑って言う。
「……つい結花が髪を結ぶときに見えるとこ眺めてました」
俺は尋問を受けた容疑者みたいに、正直に白状する。
結花は俺がどこを見ていたのか気付いたみたいだ。
「……ゆうくんのえっち」
結花は少し頬を赤らめて言う。おわっ、最近にしては珍しい表情だな。
俺は昇天しそうになるのをなんとか堪えながら立つ。
「……ヘタレのくせに」
「そ、それは……」
結花は唇をツンと尖らせながら言う。
甘々攻撃の後にいきなり精神攻撃食らわせてくるのやめて? 俺のHPはもうゼロだよ?
「そんなこと言って、結花が煽ってくるなら……俺のブレーキ壊れちゃうよ?」
俺は半分本気になって言う。実際、いつもは理性のブレーキが邪魔してるだけだから!
可愛い彼女のことを撫でまわしたい、愛し尽くしたいとかいう風に思うのは彼氏としては当然のことだ。
「そう言っても、壊れないでしょ?」
結花はまだ俺のことを煽りながら、俺を見つめる。少し期待のこもった目のような気がしたのは、俺の気のせいだろうか。
……今回ばかりはほんとに俺の理性はなくなってしまいそうだ。理性を沖縄に置いて帰ってしまうかも。
「あ、バス来たよ」
向こうからゆっくりとバスが近づいてきた。
「いつもと違うゆうくん、楽しみにしてるね?」
結花はバスが目の前に到着して、ドアが開く寸前に、ぼそっと言う。
そしてなにもなかったかのようにバスに乗る。
俺は、大して高くもない乗り口に置く足を踏み外しそうになりながらバスに乗り込んだ。
「うおっ」
俺は窓の外に広がる景色を見て、感嘆の声を漏らす。
外には、快晴の空の下にスカイブルーの南国の海が広がっている。今までに見たことないぐらいの透明度で、サンゴ礁が広がっているのがよくわかる。
「海に入るのも、楽しみだね」
「そうだね」
結花の水着姿がまだ3月なのに拝めるのか、最高だな。
俺たちは南国の海に期待を膨らませながら、伊良部島への橋を渡った。
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