ホワイトデーと春休みの予定
春休みに入ってからすぐの週末、ホワイトデー当日がやってきた。
長期休みなので、結花は朝から俺の家に来てくれる。それまでにバレンタインのお返しを渡す準備を整えておく。
「おはよー、ゆうくん!」
いつもの休日と同じように、結花は早くから来てくれた。
なんだか嬉しそうな雰囲気が、ちょっとそわそわしてて行動に出てるのが、俺にも伝わってこっちも嬉しくなる。
「うん、おはよ! ……さっそくだけどこれ、バレンタインのお返しです」
そう言って俺はカップケーキの入った袋を結花に手渡す。
「わあ、ありがとう! この1ヶ月の間、ずっと楽しみにしてたんだ」
結花はパッと花が咲いたような笑顔になって、「開けていい?」と確認してくる。
もちろん、と俺は答えて、結花が袋を開けるのを見守る。
「……ありがとう」
結花は袋の中から1つカップケーキを取り出すとそれを持って俺の方に向き直り、お礼を言ってくれる。
結花は、カップケーキを両手で包んでいるのを見つめてから、今度は俺に優しい微笑みを見せてくれる。
「どういう意味か、ゆうくんから伝えてもらってもいい?」
結花のさっきの表情からして、たぶん分かってるはずなのに、俺にどうしても言ってほしいみたいだ。
結花は少し小悪魔的な微笑みを見せて、俺が言い出すのを待っている。
「あなたは特別な人、って意味だよ。俺にとって結花は……そばにいたい特別な存在だから。今までも、ずっとこれからも」
言ってて自分で恥ずかしくなってきた。結花の顔を直視できない。
「うん、私もだよ」
そう言って、結花は俺のことをぎゅっと抱きしめる。
「……つかまえた。ずっと離さなくてもいい?」
結花はくすっと笑って、俺の耳元で囁く。
「うん、俺もそのつもりだよ」
俺は結花の真正面に向き合って、ニヤッと笑顔を見せて言う。
俺たちは時間を忘れて、2人だけの甘々な世界に浸っていた。
「……美味しい!」
暖かな春の光が差してくる窓際で、結花がカップケーキを食べているのを俺は眺める。
「ごちそうさまでした! ほんとに、ありがとね」
「うん!」
結花からお礼を言われるたびに、俺は舞い上がりそうになる。
「……これから春休み、どう過ごそっか?」
結花がカップケーキを食べ終えて、余韻に浸っているのを見守りながら俺は言う。
「あ、その話なんだけど……!」
結花はなにやらバッグをごそごそと探り、2枚のチケットを取り出す。
「お母さんから旅行券貰ったんだ」
「ええっ!? 結花のお母さんから?」
俺はかなり驚いて言う。たしか、なかなか帰ってきてくれないんだったよな、結花のお母さん。
帰って来られなくても、結花のことは大事に思ってくれてるんだな。
そう思って、俺は少しほっとした。
「うん。いきなり貰って、私もびっくりしたんだ。でも1つ条件があるって」
「条件?」
「ゆうくんに会わせること、だって」
「お、おお……。まあでも、それで結花と2人で旅行に行けるならお安い御用だよ」
どんな人なんだろ……少し怖いな、とも思う。
まあ急にそんな条件をつけてくるのは驚きだけど。今まで普通にお泊まりとかしてたのに。
「今から会いに行けたりできるの?」
早めに挨拶を済ませて、旅行の予定を立てたいなあと思って俺は結花に尋ねる。
「聞いてみるね」
結花がメッセージを送った後、どこに行くかとか話をしてたら、結花のスマホが音を立てて動いた。
「大丈夫だって、私の家で会いたいって」
「分かった」
俺は服装を整えて、結花と一緒に結花の家へと向かった。
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