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ホワイトデーに向けて

「『あなたは特別な人』……か」

「うお、いきなり呟いて……怖いぞ?」

「ああ、ごめんごめん」


3月に入って春めいてきたある日、俺と翔琉は2人で近くのスーパーのお菓子コーナーを歩き回っていた。


「いやー、バレンタインで結花からマカロン貰ったんだけど、マカロンにはそんな意味があるらしくて」

「なにその高度なデレ」


翔琉もあんまり知らなかったらしい。やっぱりデレ方もクールだなあ、とか言っている。いや、翔琉の前でふつーに、甘々にデレてるよな?


「俺は今、翔琉がそのことを知らなかったことに驚いてるよ。知ってるぞ?とか言うかなと」

「え、じゃあチョコレートは? 俺、天野さんからチョコレート貰ったんだけど」


2人で俺の検索結果が表示されているスマホを覗く。


「……難しいな」

「まあ、俺はお返しするの決めれたかな」

「な!? 優希、俺を置いていかないでくれ……」


俺は必要な材料をカゴに入れ、何を作るか決めかねている翔琉を待った。




「じゃあ、さっそく作るか」

「そうだな」


男子2人が立って作業するのには狭い俺の家の台所で、俺たちは調理を始める。


「……分かってたけど、やっぱり狭いな」


結花と料理するときは、この狭い台所のおかげですぐそばで結花を感じられるからいいんだけど。


「なあ、優希。隣に一ノ瀬さんがいたらいいなー、とか考えてるだろ?」

「ちょっ……!? 心読まないで」

「思ってたのかよ」


翔琉にツッコまれながら、俺は卵と砂糖、牛乳をボウルに入れて混ぜ合わせる。


「まあ、料理教えてもらえるのもあるからな。……でも、今回は結花に見守ってもらわずに俺1人でお菓子作ろうと決めたから」

「というと?」

「い、いや……やっぱりメッセージを込めるならそっちの方がいいかなって」


なんで俺は翔琉にちょっと恥ずかしいこと聞かせてるんだ……。

俺は言い終えて、目の前のボウルの中身をかき混ぜることに集中する。


「なんか優希、ますますイケメンになったな」

「ん?」

「いや、なんというか一ノ瀬さんに対する覚悟みたいなの感じて」

「覚悟、か。……確かに結花をずっと幸せにしたいと思うけど、それは覚悟なんだろうか」

「いやそうだろ」


俺は薄力粉を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜた生地を型に注ぎ、オーブンで焼く。


「いい匂いしてきた」

「ほんとだ、料理も上手くなってんな」


翔琉は先に渡すお菓子を完成させている。無難にチョコレートで……って言ってたけど、無難とか言う割にはお店に置いてありそうな出来だった。


生地が焼き上がったので、オーブンを開ける。家中に食欲をそそる匂いが充満している。


「美味しそう……!」


期待どおりに膨らんでくれたカップケーキを取り出す。

多めに作っておいて良かった、いますぐいくつか味見を兼ねて食べたい。


「うまっ。あんまり材料いらないのに、この味になるのは凄いな」

「やっぱり料理は心が大事なんだな」

「え?」


翔琉が、カップケーキを頬張る俺に言う。


「想いをこめて作ったら、それだけ美味しくなるんだな、って」

「なるほどね、じゃあもっと上手くなれるかも」


俺は、カップケーキが程よい甘さに仕上がっているのを確かめて、形が綺麗なものを選んで袋に入れる。


「翔琉もカップケーキ食べるか?」

「おお、いいのか?」

「うん、ちゃんと想いが詰まってる味か確認してくれ」

「それ一ノ瀬さんがやるんだろ」


「……想い、伝わるといいな」


カップケーキを渡して、一口食べたときの結花の顔を想像すると、ついニヤッとしてしまった。












いつも読んでくださりありがとうございます!


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