バレンタインを前に②
「じゃあ、材料買いに行こっか」
「うん!」
私たち3人は、スタバを出て近くのスーパーへと向かう。
「私、手作りできるかなあ……今になって心配になってきた」
「大丈夫だよ、しっかり教えるから」
私は不安そうに呟くあかりに声をかける。
「結花がそう言ってくれるなら、安心だね!」
そう言ってあかりは満面の笑顔を見せてくれる。……抱きしめたい。
私たちは、カートを押しながら3人でスーパーの店内を眺めて回る。
「ちょっと別のとこ見てくるねー」
「うん!」
私は手作りのお菓子を作るための材料が並ぶ棚を見る。
「あ、一ノ瀬先輩!」
「……後輩ちゃん?」
後輩ちゃんもチョコレートの材料を買いに来ていたらしい。こちらへ小走りでやってくる。
「あの……お願いがあるんですけど、チョコレートの作り方教えてくれませんか?」
「……え?」
後輩ちゃんは私に勢いよく頭を下げて言う。
私の近くにばたばたと2人も走って寄ってくる。
「ゆ、結花。わざわざライバルに教えることないからね?」
「そうだよ!」
2人は、私が後輩ちゃんのお願いに頷かないように慌てて制止する。
「いや、大丈夫だよ。……いいよ、後輩ちゃん」
「え、いいんですか? どういう風の吹きまわしで?」
「……やっぱり教えなくてもいい?」
「えええ、待ってください! よろしくお願いします!」
後輩ちゃんは見てて面白いほどにコロコロ表情を変える。
「大丈夫なの、結花?」
花奈が心配そうに私の顔を覗いて聞く。
「うん、ゆうくんは私のを一番に喜んでくれるから。……それに、とっておきのをあげる予定だから」
私は花奈ににっこり笑って返す。3人は私の顔を見てぽかんと口を開けている。
「後輩ちゃん、結花と戦うのは厳しいと思うよ……?」
「むー……私も頑張るので」
あかりと後輩ちゃんがなにやらやり取りしているのが聞こえてくる。
「なに作りたいの、後輩ちゃん?」
「えーっと、クッキーを作ろうかなと」
「分かった」
私たち4人は、私の家に上がってそれぞれお菓子を作る。
私は後輩ちゃんに材料と工程を指示して、助けを求められるまで見守る。
「こんな感じですか?」
生地を混ぜている後輩ちゃんが、私に質問してくる。
「んー、もう少し粉っぽさがなくなるぐらいまで混ぜるかな」
「ありがとうございます!」
後輩ちゃんは元気よく答える。
後輩ちゃんが混ぜ合わせた生地を確認して、予熱しておいたオーブンに入れる。
そして、15分ほど焼き上がるのを待つ。
後輩ちゃんは、ミトンをつけてクッキーの乗った板を取り出す。
「わあ……すごい!」
「まあ、食べてみたら?」
「はい!」
そう言って後輩ちゃんはパクッと1枚バニラとココアの市松模様のクッキーを口に運ぶ。
「わあ、美味しい! 一ノ瀬先輩、ほんとにありがとうございます!」
後輩ちゃんは嬉しそうに頬を緩ませてお礼を言う。……ゆうくんに絡んでこなかったら可愛い後輩だけど。
「花奈とあかりはどう?」
私は後輩ちゃんと同時進行で2人の作業も見守っていた。
「うん、美味しいの作れたよ! ほんとにありがと、結花も頑張って」
「ありがとう、バレンタイン楽しみだね」
「うん!」
3人とも良い出来映えのお菓子が出来たらしく、皆満足してバレンタイン前女子会は終わった。
「……これで良し、っと」
私は自分の作ったお菓子を一口味わい、味を確かめる。
作業を終えて、時計を見やるともう夜の9時になっていた。
「ゆうくんの喜ぶ顔が楽しみだなあ」
私は、完成したお菓子を丁寧にラッピングしてから眠りについた。
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