結花と凧揚げ
暖かな陽光を浴びながら、俺たちは家へと帰ってきた。
「おはよー、明けましておめでとー」
玄関を開けると、母さんが迎えてくれた。
「おめでとうございます!」
「うん、おめでとー」
「ちょうど朝ごはんできたとこだから、皆で食べよう?」
俺たちが返事をすると、母さんはさっそく朝食を食べようと誘ってきた。
父さんも合わせて、4人でテーブルにつく。なんだかこの景色が当たり前のことのように思えてきた。
「美味しそう……! いただきます!」
俺たちは朝からぜんざいを食べられるらしい。俺は勢いよく両手を合わせる。
「……あっつ、あま」
熱々な小豆が口の中で踊ってるみたいだ。
口の中がその熱さに慣れてくると、小豆の甘味が広がり始めてきた。
「ここ数日の結花との感じみたいに甘い」
「嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい……」
俺は親の目の前なのに、息をするかのように自然な感じで惚気てしまう。
父さんと母さんはニヤつきながら俺たち2人の様子を眺めている。
惚気ながら食リポって我ながら新しすぎるな、今後甘さを表現するときはこれで行こう。
「糖分摂取は大事だからな! というわけで俺は餅を食べまくろうか」
父さんの言うとうぶんは普通の意味らしい。
「あ、2人は今日の予定とかあるの? 買い物とか行く?」
「んー、まだ決めてないけど、ここに来てるからこそできることしたいなって」
「なるほどね……じゃあ、凧揚げとかしてきたら?」
凧揚げか……懐かしいな。小学生の頃はお正月に河川敷走りまわってやってたなあ。
「楽しそうですね! やったことないのでしてみたいです!」
「押し入れから発掘してくるねー」
結花の反応を確認して、母さんは押し入れに探しに向かった。
発掘て。まあ、最近使ってないから埋もれてそうだが。
「あったよー」
母さんは2つ凧を持ってきてくれた。
「ありがと、もう少ししたら行こうかな。それでいい、結花?」
「うん、大丈夫だよ!」
30分後、俺たちは家からすぐ近くにある、利根川の河川敷にやってきた。
「……やり方はこんな感じね」
「うん、分かった!」
結花が初めて凧揚げをやるということで、一応あらかたやり方を説明した。
「じゃあ、やってみるねー」
「うん」
結花は向こうから走ってきて、凧を空へと飛ばす。
「だいぶ高くあがってない、ゆうくん?」
「うん。何メートルぐらいだろ」
結花はまるで子供みたいに、あどけない表情をして俺のもとに駆け寄ってくる。
「ゆうくんも一緒に揚げよう?」
「うん、そうだね」
俺も思い切り助走をつけて、凧を空高く揚げる。
俺たちは童心に帰って、2人で凧揚げを楽しんだ。
余計かも知れないけれど、一言付け加えると……結花が走ると胸の揺れが凄くて100%童心には帰れなかった。
成長したんだなあ、俺。これで実感するの、最低すぎる気がする。
「ふー……けっこう体力使うね」
「まあ、走らないと高く飛ばないからね」
俺たちは河川敷の芝生に腰を下ろして肩で息をしながら、お互い顔を見合わせて笑う。
「来年もまたここに戻ってきたいな。もちろん凧揚げもしたい」
「そう言ってもらえたら嬉しいな」
俺も久しぶりに、よく知ってる地元に戻ってきて楽しかったな。
「来年は受験あるけど、息抜きも大事だしね」
「俺も結花とまた来年もここに来れたら、最後の追い込み頑張れそう」
「えへへ、またゆうくんと行きたいとこの予約できたね」
カレンダーをその予約で一杯にしたいな、と思う。
ま、とりあえずは今年帰るまで楽しみまくろう。今年のお正月は甘々スペシャルで!
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