初日の出
年越ししてから、ちょっと瞼を閉じかけたりしたけれど、結花とずっと話したりしてたらいつの間にか朝の6時になっていた。
一緒に夜更かしして年越しすることが夢みたいに嬉しいので、初夢見ないでも俺は1年幸せです。
「結花、初日の出見に行かない?」
「うん、行きたい!」
さっと上着を羽織って、外に出る準備は完了した。
日の出まではあと30分ないぐらいか、もう東の空は明るくなり始めてるかもしれない。
眺めの良いところまで少し歩くのもありだな、どうしようか。
そう思いつつ玄関に向かおうとすると、結花が心配そうに俺の服の袖を引く。
「どうしたの?」
「一緒に行かなくていいのかなって」
結花は俺の親の部屋の方を指差しながら言う。
「2人ともなかなか起きないし、それに寒がりだから毎年家の中から見てるよ」
「あ、そうなんだ」
「うん、だから大丈夫。 それじゃ、行こっか」
「うん!」
一応目覚ましは日の出時刻の10分前に設定して部屋の前に置いておいた。
10分前なら外に出てこようと思ってもギリ間に合うだろうという俺の優しさ。起きるかは分からん。
俺たちは家から少し歩いたところにある、高台に立っている神社を目指す。東京の神社と違って、人が押し寄せたりしないから、初日の出を拝むのにはうってつけだ。
「ちょっと明るくなってきてるね」
「ほんとだ、雲もなさそうだね」
俺たちは階段を上りきって、振り返って空を見る。
辺りに自分たちが吐いた白い息が広がる。
初日の出を眺めるのには絶好のコンディションだ。
だんだんと東の空が橙色のグラデーションに染め上げられていく。
「あ、見えてきたよ!」
結花は目を輝かせて、地平線から顔を出した朝日を眺める。
まばゆいくらいの陽の光を浴びて、俺たちは目を細める。
太陽は正月だとか、そんなことお構い無しに昇ってくるし、いつもと変わらないと言えばそれまでだけど、特別に見える。
隣に結花がいるのも、朝日が特別に見える理由の一つだと思う。
「……今年も頑張らないとな」
俺は朝日に照らされた結花の表情を見ながら、小さな声で呟く。
隣にいてくれる結花を大事にすることもそうだ。……頑張るとは違うか。
気持ちを理解するのは、もう少し頑張らないといけないかもだが。
「!?」
いきなり結花が後ろから腕を回してきて、ぎゅっとされる。
「そんなに頑張りすぎなくてもいいよ、ゆうくん?」
耳元で小さく結花が囁く。え、なにこれ悪魔の誘惑なの?
そんなこと言われたら正月から甘いもの食べまくって体重増えちゃいそう。
「ど、どうしたの?」
「あ、えっとね……」
こほん、と小さく咳をして結花は続ける。
「ゆうくんが頑張ってるのは、私は知ってるから。頑張りすぎて疲れないか心配だなって」
「あ、ありがとう」
「私はゆうくんを見守りつつ、一緒に頑張るのが今年の目標かな」
結花がそう言ってくれて、暖かな気持ちに包まれる。
結花と一緒に眺める朝日がさっきよりも輝いて見えた。
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