朝からイチャイチャ
「んー、おわっ!?」
俺は起きた瞬間、胸から背中にかけて、なにやらぎゅっと抱きつかれていることに気が付く。身動きが取れねえ。
そして背中には、柔らかい2つの山がばっちり当たっている。
たぶん結花はぐっすり寝ちゃってるんだろうな。
「起こすのは申し訳ないなあ……あともったいないなあ」
あと2、30分経ったら起こすか。
てかさあ……。なんで俺昨日も寝落ちしてんの。
布団の中とかいう、こそこそイチャイチャするには最高の状況だったのに。
あ、でも俺の今の家の方がバレんな。俺たち以外に誰も入ってこないし。
ただ、誰かが来るかもしれない、っていう状況でのスリルもまた良いものであったりする。じゃなくて。
「結花、起きて」
冬休みだし、これが今の俺の家だったら起こさずにごろごろするのもありだったけど、絶対どこかへ連れていかれるだろうな。
料理作るって言った手前、買い出しに行かないといけないわけだし。
「……いま、何時?」
俺をホールドしてた結花はいきなり布団からバサッと飛び起きる。身動きが取れるようになった俺は、もぞもぞと這ってやわらかなオレンジ色の明かりを灯す。
「え? えっと……5時半ぐらい」
「あんまりいつもと変わらない……」
結花は「ゆうくん起こす作戦だったのに……」ってかなり残念そうにしている。
「まあ、俺の親2人とも起きるの遅いから。俺たちでゆっくりする時間はあるよ」
「そうなの?」
「うん、いつも俺が一番早く起きてたから」
俺はそう言って、親はいつも何時ぐらいに起きてたかな、と思い出してみる。
うん、あと30分は猶予があるな。
「昨日の夜、ゆうくんが早く寝ちゃったからできなかったこと、今からしよ?」
「その節は大変申し訳ございませんでした……!」
結花はほんのすこし頬を膨らませて言う。
これ、非リア卒業が近い翔琉にそろそろいじられそうだな、ヘタレだって。あれ、いつの間にか立場逆転されてね?
「ゆうくん、いつもそうじゃない? ……せっかくのチャンスなのに」
「なんでもしますからどうか許してください」
俺はまだ頬を膨らませたままの結花に平謝りする。
「……なんでも?」
結花はクール時代に見せてたような、不敵な微笑みを浮かべて言う。勝利を確信したときみたいな。
なんでも、は禁句だったわ。
「……じゃあ何にしようかな。 んー、やっぱりゆうくんが決めて?」
「え、俺が?」
「うん、ゆうくんには私の気持ちを推し量ってもらうことも必要かな、と」
「たしかに……」
どこまでが大丈夫なラインなのか分からない。
そりゃ俺だってイチャイチャしたくないわけはない。というかイチャイチャしつくしたい。
大丈夫なラインを聞いて確認したい……。めっちゃ野暮だが。
俺は結花の背中に両腕を回して、ごろんと2人とも布団に転がる。
ハグしてるような距離感でそのまま横になった感じだ。
こうすると、結花の顔が目の前にくる。
長い睫とか、柔らかそうな唇とか、ぷにぷにしてて触り心地の良い頬とかが、暗い中でもこの距離なら見える。
「どう……?」
「ん……70点」
微妙だなあ、ギリ合格なんだろうか?
恥ずかしがってちゃ、結花の求める100点にはならないな。
そう思って、結花の体を抱き寄せて、そっと唇を重ねる。
朝なのに乾燥してなくてふにふにと柔らかい。毎日保湿とかしてんのかな、そういうとこまで頑張ってそうだなとか考えた。
「んっ」
「……合格?」
結花がちょっと声を漏らして、苦しいのかな、と思ってぱっと離れる。俺は満足したけど結花さんは……?
「……うん」
俺たちはその後も、お互いの鼓動が聞こえるぐらいくっついていた。
「もう6時半だよー、朝ごはんできたから出てきてー」
起きてから1時間も経ったのか。
俺たちは襖が開け放たれることを警戒して、勢いよく飛び起きる。もし親にこの状態を見られたら、俺が悪いことになって寒空の下に放り出されること間違いなし。
「おはよ」
「おはようございます!」
俺たちは親にバレないように、平静を装ってリビングへと出た。
若干冷や汗かいたけれど。
いつも読んでくださりありがとうございます!
昨日更新できませんでした、すみません……。
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