一家(?)団欒
「お父さんが帰ってきたら、皆でお寿司食べようか」
母さんが俺たちに言う。
「楽しみです!」
「結花ちゃんもいっぱい食べてね?」
「はい!」
結花と母さんは楽しそうに会話をしている。
「何か手伝いましょうか?」
「え、いいの? それなら……お皿拭いてもらってもいい?」
「わかりました!」
「あと、『お義母さん』って呼んでほしいんだけど……」
母さんは電話で言った通りの要求をしている。
それ手伝いなの? ……なにかしらはかどって作業効率上がりそうではあるが。
結花が手伝ってるのに、俺はソファでごろごろするのはいけないなと考えて、部屋掃除をしようと思い立った。
「部屋めっちゃ片付いてる……!」
俺が高校に通ってて、この部屋は誰も使っていないはずなのに、勉強机とかが整えられている。
「……掃除機ぐらいかけるか」
クローゼットの中の掃除機を取り出して、床を滑らせていく。
「懐かしいな」
中学校時代に使っていた参考書が、棚に整然と並べられている。
あのとき今の高校を受けよう、と思って本当に良かったな。
中学生のときの俺、いい仕事した。
俺は掃除機を置いて、棚に置いてある参考書とかアルバムとかをパラパラとめくる。
掃除中ついついやってしまうんだよな。それで掃除が全然進まないっていうあるある。
「それ、昔のゆうくん?」
結花が俺の方を覗き込みながら言う。
「おわっ、いつの間に?」
「さっき手伝い終わったから、ゆうくんは何してるかなーって思って」
「なるほど」
「これ、中学生のときの?」
「うん、そうだよ。卒業式かな」
そう言いつつ俺はまたページをめくる。
そこには某後輩と思われる娘に俺の制服のボタンが貰われていく瞬間の写真があった。親さん、とんでもないの残してくれたな。
……このときは、今よりだいぶ髪が長かったんだな。通りで最初はあんまり気づかなかったわけか。
「……何も見てないね?」
「あはは、気にしてないよー。ただ、何円で買い取れるかな、とは思ったけど」
「わりと気にしてません、それ?」
俺は即座にページを変えたけど、結花にバレていた。
「結花も昔の写真とか持ってるの?」
俺は若干焦りながら話を変える。
「うん、家にあるよ」
「そう言えば、結花の中学時代のことまったく知らないなあ」
俺はそういや聞いたことがないなあ、と思いながら言う。
「まあ別になにかあったわけでもないけどね。高校入ったばっかりの、ゆうくんと仲良くなる前みたいな感じだよ」
結花はそう言って微笑む。
「あの頃の思い出よりも、高校入ってからの思い出が多すぎて、あんまり覚えてないっていうのもあるけどね」
そう続けて、さらに結花が付け加えようとした瞬間、母さんが部屋のドアを開ける。
「さ、お寿司食べよー!」
母さんの高めなテンションに、俺たちのラブコメは妨害を食らった。くやしい。
俺たちは母さんに付いていって、リビングに行く。
「おー、優希! 久しぶりだな」
親友に再開したときみたいな感じで、父さんが声をかけてくる。
「お邪魔してます、一ノ瀬です!」
「おー、そこまで固くならなくて大丈夫だよー。ゆっくりしていってねー」
父さんは、「優希が彼女さんを連れてくるなんて感動するなー、今日はお祝いだな」と言いながら、バクバクお寿司を食べている。
俺たちは、学校はどんな感じなのかとか、普段の生活で俺が迷惑かけてないかとか色々質問攻めされる。
「優希くんの料理、ほんとに美味しいんです!」
「ほ、ほんとに? 中学生のときは包丁握ったことなかった気がするんだけど」
「たしかになあ、じゃあ明日にでも何か作ってくれよ」
母さんと父さんは2人とも俺の成長ぶりに驚いている。
「あー、そうだね……。まあ頑張ってみる」
「私も手伝うよ?」
自信なさげに聞こえたのか、結花がフォローしようか、と言う。
「いや、まあ1人でやってみるよ、成長見せたいし」
母さんと父さんは、俺の言葉を聞いて互いに顔を見合わせる。
「なんかイケメンになってる」
「やっぱり恋の力は偉大なんだな、俺も変わっただろ?」
「お父さんはもともと格好良かったよ」
「なにそれ照れるな」
「……」
俺たちは4人で楽しく食卓を囲んだ。……親のラブコメを見せつけられるのには閉口したけど。
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