今年のクリスマスもケーキ作り
エプロン姿の結花がいきなり現れる。いつの間に身に付けたんだ……?
エプロンというものは、母性を感じさせる偉大な効果があるように思う。って、何考えてんだ俺。
「クリスマスケーキ作りね、俺ちゃんと手伝うよ」
「うん!」
ケーキ作りは俺たちのクリスマスの恒例行事になるようだ。
「昨日ケーキの材料も持ってきてたんだー」
結花は冷蔵庫から、結花が家で焼いて
きてくれた中ぐらいの大きさのケーキのスポンジを2つ取り出す。
「今年は2つ作るの?」
「うん、ゆうくんが1つで私が1つね」
「え、俺がまるまる1個作るの?」
「うん、今のゆうくんなら作れるよ」
手伝うってレベルじゃないんだが。
結花さん、それはちょっと俺の事買いかぶり過ぎでは?
「私がチョコのケーキ作るから、ゆうくんは生クリームのを作って、はんぶんこしたいなと思って」
「なるほどね」
それは名案だなあ。まあ、俺が上手く作れるのなら、って話だけど。
……とりあえずやってみますか。
「こう、だよね?」
俺は生クリームの原形にかき混ぜる機械を突っ込みながら確認する。
「うん、そうだよ」
結花は俺の近くまで寄ってきて教えてくれる。
結花は機械のスイッチを押して実際にやってみせる。
隣で教えてもらっているから当たり前のことなんだけど、服が擦れる程度の距離に結花がいる。近っ。
「はい、こんな感じで」
「おっけ」
俺はなんともなさげに機械を受け取る。距離が近いぐらいで照れてたら俺だけ初々しいし。
俺は慎重にスイッチを入れる。
ブーン、と音を立てながらクリームになるだろう液体がかき混ぜられていく。
「そうそう!」
結花は俺の動作を確認しながら、スポンジにチョコクリームを塗りたくっている。
え、早くない? ハンデあげたつもりはないんだけど。
……俺はどちらかというと、もらうほうだろ。
「クリームっぽくなったかな」
俺が知っているホイップクリームが出来た気がする。
結花が隣にひょこっと出てきて、ホイップクリームを少しだけ舐める。
結花が目をつぶって味わっているのをじっと見つめる。
作業中なのに抱きしめたくなるほどのかわいさ。さすがに我慢した。
「ん~、美味しい!」
結花はとろけるような微笑みを俺に見せて言う。良かった……!
「あとはホイップを塗って、イチゴのっける感じか」
ケーキの上に、ソフトクリームみたいにホイップをのせるの難しいな……。
俺は首をひねりながら試行錯誤する。
「できた!」
店に出せる出来栄えには程遠い気がするが、1年前の俺に見せたら「絶対自分で作ってないだろ?」と言われそうなほどには上手く作れた。
見た目より味だ、と言えるぐらい美味しかったら満点だけど。
「はんぶんこしよ?」
「うん」
結花にケーキを二等分してもらって、チョコケーキをもらい、俺が作ったケーキをあげる。
「それじゃ、いただこうか」
俺は目の前にあるケーキの誘惑に耐えられず、さっそく食べ始めようとする。
「うん! ゆうくんが作ってくれたのから食べるね」
俺は手を止めてフォークを置き、結花がケーキを食べるのを固唾を飲んで見守る。
「ん、甘くて美味しい。毎日食べたいくらい!」
結花の感想を聞いて、俺は飛び跳ねそうになるほど嬉しくなった。
「毎日作ったら、ずっと甘々だね」
俺はニヤッと笑いながら言う。
「私は甘々でいいよ? ……色々な意味で」
甘やかしてもいい宣言、来ました。
「お、うん。……じゃあ、俺も結花のケーキいただきます」
「うん、喜んでもらえると嬉しいな?」
俺は一口分を取って、口に運ぶ。
「美味しい……! ゆっくり味わって食べるね」
美味しいのは当然のことだ。今まで食べたどんなケーキよりも、チョコとフルーツのバランスが取れていて、口のなかで調和している。
俺が次の一口を食べようとすると、結花がフォークに刺したケーキを俺の方に差し出してくる。
ケーキがあるところにラブコメ展開あり、というわけらしい。これはゆっくりケーキを味わえそうだ。
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