お風呂場で
体を洗い終えて、浴槽にゆっくりと足を突っ込む。
入浴剤とか入れた方が良かったかな。
やはり俺の家の浴槽は2人が入るのを考えた設計になっていない。
2人が並んで浸かるのには幅が狭すぎる。
「ごめん、狭いよね」
「いや、これはこれでいいよ。ゆうくんと近くにいれるし」
近くとかいうレベルではない。実際、俺と結花の脚が当たって、肌が触れあってるし。その度に俺の心臓が跳ねる。
「俺、足湯でもいいよ?」
そう言って、腰を上げ浴槽の縁に座ろうとする。結花に暖まってもらうのが最優先だし。
「一緒に入ろうよ、ゆうくん」
結花はすべすべした、触り心地の良い手で俺の腕を掴む。そう言われたら、断れるはずがない。
「……結花がいいなら」
「うん!」
俺としても色々抑えきれなくなりそうなんだけど。結花が良いって言ってくれるなら、やりますよ?
「どうやって入ったら2人で浸かれるかなあ」
そう言って結花は浴槽の形をよく見る。
謎の段差が多いんだよな、この浴槽。
「あ! これならどうかな?」
結花がなにやら閃いたらしい。
「ん、どうするの?」
「私がゆうくんの足の間に座る感じは? もたれかかってもいい?」
「……はい?」
それ一番まずくないか。……いや、逆の方がまずいか。
たしかに、2人が湯船にどっぷり浸かるのには効率いいけれども!
俺も健全な男子高校生だってこと、忘れてないかな。
まあ正直に言えば、その景色は見てみたい。
「いいんだよね、結花?」
念のため、俺は最終確認をする。同意の元ならOK……だよな。
「うん! なら……失礼します」
結花は俺の胸に背中を預ける。
結花の水着の紐が当たって、こそばゆさを感じる。
「……気持ちいい」
結花はうっとりとしたような、いかにも気持ち良さそうな声で言う。
結花の二つの山がどうしても目に入る。この状況なら目を背けようがないし、不可抗力だから!
そう思って俺は男子高校生らしく眺める。
ほんとにモデル体型だなあ。
「手、繋ごう?」
俺はなんとなく結花に提案してみる。あのまま眺め続けてたら、なんかしそうだし。
浴槽のサイズ的に、手をつなぐのも一苦労ではあるけれど。
「もちろん!」
結花と俺は、浴槽の中でもぞもぞ動いて、いつかやった恋人繋ぎをする。お風呂の中で指を絡めていくのは、なんとも言えないむず痒さがある。
「えへへ」
結花は、俺の方を見上げてとろけた表情を見せる。顔が火照って、体温が急上昇しているように感じる。
不意に、結花は頬を俺の胸にくっ付けてくる。
「ゆうくんの鼓動、速いね」
「なんか緊張しちゃって。俺だけうぶだよな」
俺は苦笑いして言う。
「そんなことないよ。私も、今ゆうくんと一緒にお風呂入ってて鼓動が早まってるよ」
結花も、同じように感じてくれているんだな。
そう思うと、なんだかとても嬉しい。
「確かめてみる?」
「……へ?」
また結花は想像の斜め上の発言をする。それって……?
「いやさすがにそれは……またの機会にしとこうかな」
「? うん」
俺たちはのぼせる寸前まで、心の中まで暖めてくれるようなお風呂を楽しんだ。
「じゃあ、上がろっか」
結花は頬を紅潮させて、長い黒髪からお湯を滴らせて言う。その姿はたぶん俺の記憶に一生残るな、と思った。
「そうだね」
まだクリスマスイブだ、これからが楽しみで仕方ない。
いつも読んでくださりありがとうございます!
ブックマーク、評価が励みになります!




