皆が帰ったあとは2人で
全員がゴールのマスにたどり着いた。
「じゃあ、結果発表だね!」
やけに自信ありげな感じで結花が言う。これ絶対圧勝じゃん。
俺たちは床に並べられた全員の所持金を確認する。
「結花が1位、か」
まああの自信ありそうな感じからしてそうだとは思ったけど!
「んで、姫宮がビリ、と」
「決着、ついたよね?」
結花は勝ち誇った表情で姫宮に言う。姫宮は結花の新しい一面を引き出してくれるので、そこんところは感謝だな。
「うー、明日は諦めてあげます……」
姫宮は負けを認めて、悔しそうな表情を見せる。
「もともとそのつもりだったろ、姫宮は案外そういうとこは分別あると思うから」
そうであると信じてる。
流石にクリスマス当日にまでやってこられたら極寒の中でも追い出しちゃいそうだから。
「え、ありがとうございます! 褒めてくれるってことは多少脈アリってことですね?」
姫宮は明るい声で言い、ニヤッと微笑む。
「違うけど?」
俺は間髪いれずに返す。怖いです、姫宮のそのポジティブすぎるメンタルと結花のジト目が。
人生ゲームのあとも、トランプやったりポテチ食べたりでパーティーらしく盛り上がった。
結花はそのまま俺の家に泊まることになっているので、皆を外まで送る。
「今日はありがとねー」
「楽しかったです、また呼んでください!」
「俺、明日の予定ないんだけど……どうしたらいいかな?」
ものすごく悲痛そうな声も紛れてたような。
見送ったあと、耳や指先が痛むぐらいの寒さを感じて俺たち2人は家に急いで戻る。寒いから先にお風呂沸かすことにしよう。
部屋に入ってから、結花は自分の吐息で両手を暖めている。
「今日のとこは後輩ちゃん呼んでて良かったね、盛り上がったし。まあ、明日は2人でパーティーだね」
そういえば今日はクリスマスじゃないんだった! パーティーとかして、クリスマスっぽくて忘れてた。……いま俺、サンタの仮装してるしな。
ただ、あと1日あると思ったら嬉しいな。
「明日は一緒にケーキ食べようね?」
「うん、プレゼントも楽しみにしてて」
「楽しみにしてるね!」
結花はとびきりの笑顔で言う。俺も結花がどんな反応をするのか、結花から何を頂けるのか想像すると、楽しみだ。
「結花、先にお風呂入ってきていいよ」
結花が小さなくしゃみをしたのを聞いて、お風呂を勧める。
「じゃあ、お先に入ります」
そう言って結花がお風呂場に向かうのを見送る。
しばらくして、お風呂場から呼び出し音が鳴る。どうしたどうした。
俺は小走りでお風呂場の前まで行く。ドアを開ける寸前で、結花が入っているのにいきなり開けるのはまずいという結論に至った。俺の頭、ちゃんと仕事して偉い。
お風呂場のドアがゆっくりと開き、結花が顔だけ外に出す。
「一緒に入らない?」
「……へ?」
予想外のお誘いに、俺は棒立ちになる。い、いま……もしかして、何も着てなかったりするの? そう思うと、途端に心臓の音が聞こえるようになった。
「一緒に入れるように水着着てるから。……ゆうくんと一緒に入りたいな」
「お、おう」
結花のお願いは俺に対して何よりも強い効力を発揮する。しかも紅く頬を染めて言われたら。
俺はお風呂に入る準備をさっと済ます。もちろん水着着用。
2人が入るには俺の家のお風呂場は狭い。そのお風呂場に俺は足を踏み入れる。
結花は、普通にプールに来た、みたいなビキニの水着を着ている。夏に着てたやつ。
確かにそっちの方がタオルを巻いてるのよりかは体洗いやすそうだけど! こっち的には色々問題が。
俺はお風呂場に入ったのに、思考停止してなにもせず立っている。
「私が洗おうか?」
「あ、お願いします」
洗ってもらうってことはほぼ密着する、ってことなんだけど。……もう流れのままにいこう。
結花がシャンプーを泡立てて、俺の髪をわしゃわしゃと洗っていく。
「痛くない?」
「うん、むしろ気持ちいい感じ」
俺の背中に結花が触れるので、心臓がバクバクするのは置いといて。当たってるのがどことは言わんが。
髪をシャワーで洗い流したあと、結花はそのまま体を洗おうとする。
「さ、さすがに体は俺が洗うよ」
「……? 分かった」
今さら恥ずかしがることないけど?みたいな顔をして結花が言う。
この調子じゃ、湯船に浸かるとき大変そうだなと思いながら、俺は自分の体を洗い始めた。
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